「俺の愛しきひと。名前がないのなら俺がつけてやる」
「でも、わたしは冬姫。鬼に憑かれ、身近な人間を破滅へ導くであろう呪いを持っているわ。わたしを求めるなんて……一緒にいたら滅ぶ運命になる。何を考えているの? あなただって、死にたくはないでしょう?」
「案ずるな。俺は鬼神だ。鬼に憑かれたお前が鬼の花嫁になるのは別におかしなことではない」
「鬼、神……」
 その言霊に、少女は囚われる。自分が身に宿している鬼よりも強い男が、目の前で微笑を浮かべている。少女の驚きの表情に、満足しているような、柔らかい微笑。
 そのまま、包み込むように両手を胸元へ寄せ、呟く。