「花嫁?」
 そのまま、しゃがみ込み、少女の顔を見上げる。真剣な表情が、それが嘘ではないことを示している。
「基房殿より話はうかがっている。お前が呪われた身であるがゆえ婚姻をなすことができぬことも」
 忠誠を誓うように、義仲は少女のまるくおおきい落栗色の瞳を真摯に見つめる。
「だが、俺はお前が欲しい」
 そう口にして、少女の手をとり接吻をする。
「……父さまは?」
「正式に許しを与えることはできぬ、だが娘を幸せにする自信があるのなら奪っていけ、と」
 そして、少女の手を握ったまま、立ち上がる。
「だから迎えに来た。俺の花嫁にするために」
 うたうように、義仲は口にする。