「俺のことを知らないか」
聞いたことのない、低くて透きとおった男のひとの声。
「あなたは誰?」
素直に問い返す。
「……葵め、何も説明してねぇんだな」
自分ではない誰かの名を口に乗せ、呆れたように息をつくと、何事もなかったかのように男は笑う。笑うと、少年のようなあどけなさが垣間見え、少女の警戒心をすこしだけほぐす。
「俺は、義仲だ」
「ヨシナカ?」
「そう。お前が藤原北家の呪われた冬姫さまだな?」
「巷ではそう呼ばれているみたいだけど、わたしの名前ではないわ」
突っぱねるように声をあげると、義仲はわかっているとばかりに頷く。
「じゃあ、ほんとうの名前は?」
聞いたことのない、低くて透きとおった男のひとの声。
「あなたは誰?」
素直に問い返す。
「……葵め、何も説明してねぇんだな」
自分ではない誰かの名を口に乗せ、呆れたように息をつくと、何事もなかったかのように男は笑う。笑うと、少年のようなあどけなさが垣間見え、少女の警戒心をすこしだけほぐす。
「俺は、義仲だ」
「ヨシナカ?」
「そう。お前が藤原北家の呪われた冬姫さまだな?」
「巷ではそう呼ばれているみたいだけど、わたしの名前ではないわ」
突っぱねるように声をあげると、義仲はわかっているとばかりに頷く。
「じゃあ、ほんとうの名前は?」