スマートフォンの画面に大きく映し出された画像に目を疑う。それは遊園地の観覧車をバックに、六人が集まって撮ったものだった。画像の端で佐山くんに肩を組まれ、気恥ずかしそうに視線を逸らした()を見た途端、激しい頭痛に襲われた。

「いっ……たぁ!」
「凛花? ……ちょっと、大丈夫?」

 一気に襲い掛かる痛みに、両手で頭を押さえて俯く。目を閉じると、足元に色の変わった土が目に入った。中心には青い氷塊が小さく残っており、吹いた風に乗ってソーダのような甘ったるい匂いが漂う。

 その瞬間、今度は頭の中に一気に記憶が溢れてきた。

 地面に落としたラムネのアイス。

 大きく揺れる観覧車。

 日がすっかり落ちた夜に渡した回覧板。

 放課後のコンビニ。

 お母さんの叫び声。――衝突寸前の、車のブレーキランプ。

 すっかり抜け落ちていた記憶が時間を遡って戻ってくる。こんな記憶、私は知らない。身に覚えがない。――仮にあるとするなら、私が事故に遭った後に見てきた『私』の記憶?

 すると場面が一転し、今度は横断歩道の前に立つ彼が現れた。まっすぐ見据えられたその目から、逸らすことはできない。彼は私を見て小さくと微笑んだ。

 ――凛花。

「……ああ、これは」

 これは私が望んだ世界じゃない!

「凛花? どうしたの?」

 背中にさっちゃんの手が触れる。ゆっくりと顔を上げると、彼女が困った顔をしていた。

 ごめんね、いつもさっちゃんに話して重荷を背負わせてきちゃった。巻き込んでしまって、頼ってしまってごめん。

「……さっちゃん、どうしよう」

 小太郎が死んじゃうかもしれない。――震えた声で縋ると、さっちゃんが目を見開いた。