「じゃ、友達のフリでいいよ!」

 という、一種の妥協案を、倉敷さんが提案してきた。

「フリ?」

「うん、友達のフリ。お弁当を食べたり、クラスで話したりするけど、本当の友達じゃなくて……その、なんていうのかな。お互い干渉しないっていうか、必要なときだけ、友達でいるの。それなら、遠野さんにもメリットがあるよ。わたし1人さえ友達をつくれば、あとは友達を作らなくても、不自然じゃないっていうか……」

 自分で言ったのに、倉敷さんは上手くわたしに説明できないようだった。

 しかし、わたしは倉敷さんが言わんとしていることが理解できた。

 そして、この提案は、倉敷さんのいう通り、わたしにもメリットのある話なのは理解できた。


 つまり、利害関係の一致。


 わたしは確かに、誰とも仲良くなりたくはないと思っているが、誰かと仲違いになりたいとは思っていない。

 そして、クラスという団体行動を重んじる空間では、個人でいるというのはとても危険で、標的にされやすい。

 ちょっとしたきっかけで、群れになって1人を攻撃し始める連中が現れる。

 残念ながら、前の学校のわたしは失敗して、いじめられはしなかったものの、明らかに『クラスに馴染めない可哀想な奴』というレッテルを貼られてしまっていた。

 問題になるようなことは起きなかったけれど、学校での居心地は決して良かったとはいえない環境で過ごしていたのは確かだ。

 だから、この学校では、せめてクラスメイト達から、普通の人間だと見られるように努力しようとしたのだが……。