きみがくれた日常を






「じゃあ、あおちゃん彼氏できたんだ! 
 おめでとう」

 昨日のことを由乃に報告すると、由乃は自分のことみたいにうれしそうだった。

 今日は由乃の家に遊びに来ていた。
 ほんとは勉強を教えてもらいに来たんだけど、いつの間にかおしゃべりに変わっていた。

「え?」

「え? だって両想いなんでしょ?」

 たしかに両想いってことだけど。

「でも、付き合お? とかわたしは言わなかったし、伊織も言わなかった」

 思いが通じたそれだけで奇跡だと思う。
 だから、べつに付き合いたいとかは……。



「わたしも告白したよ。けど、フラれちゃった。
 他に好きな人がいるみたい」

「そっか……」

 こういうときってなんて言えばいいんだろうな。
 言葉を必死に探していると、由乃が言う。

「でも、あおちゃんのおかげで告白できた。
ありがとね? これからはただの友だちに戻れるようにがんばるよ」

「由乃」

 やっぱりいい子だ。
 わたしの親友をふるなんて颯太くんの好きな人はだれなんだろう。
 疑問は残ったけど、これ以上颯太くんのことについてはなにも話さなかった。





「伊織、ここにいたんだ」

「あ、うん」

 由乃の家から帰る途中、星空公園でブランコを漕いでる伊織を見つけた。
 だから、わたしもその隣のブランコに腰をかける。


「伊織。わたしたちって付き合ってないよね?」

 せっかく伊織に会えたんだからさっき由乃から言われたことを訊いてみる。

「……うん」

 伊織はなにかを考えるように頷く。

 やっぱりそうなんだ。いや、わかってたこと。
 だけど、改めて言われる少しと悲しいな。

 わたしが悲しい顔していたからか伊織が慌てたように声を出す。

「違う! 葵と付き合いたくないわけじないよ!
 でも、ごめん。自分勝手だと思うけど、俺はまだいまのままがいい。俺は葵の気持ち知ってるし、葵も俺に気持ち知ってる」

 伊織は必死に言葉を紡ぐ。

「だったら付き合わなくてもこのままでいいと思わない?」

「そうだね」

「でも、葵が付き合いたいって言うなら……」

「大丈夫! まだこのままでいいよ」

 大丈夫。
 付き合わなくても、彼氏彼女の関係にならなくとも伊織のことが好きなのは変わらない。 
 そして、伊織もわたしのことを好きでいてくれる。
 じゃあべつになんも変わらない。

 伊織が理由なしにこういうことを言わないのはわかってる。
 これにもなにかきっと理由があるに違いない。

 だから、全然大丈夫。