きみがくれた日常を



「あおちゃん! 遊園地好き?」

 学校の自分の席に着くなり、由乃がわたしの元へやって来て言う。

「え、もちろん!」

「じゃーん、フリーチケット! 
 お父さんの友だちに4枚もらったんだ。明日、行こうよ」

 由乃がチケットを見せる。
 それを見て思わずテンションが上がった。
 すごい。4枚もあるなんて。


「うん! あと、だれ誘うの?」

「あおちゃんは伊織くんでしょ?」

 んん? この子いまなんて言った?
 伊織? なんで、伊織が出てくるの。

 思っていたことがそのまま口から出る。

「なんで伊織なの?」

「なんでって……えっと、あおちゃんにとって特別な人なんでしょ!」

「そ、そうだね」

 たしかに伊織はわたしにとって特別な人なんだけど、人から言われるとちょっとはずかしい。


「じゃあ伊織くんはあおちゃんが誘っておいてね」

「……わかった!」

 もうひとりは由乃が誘うみたい。
 だれが来るのか楽しみだな。

 テンションが高いまま伊織が隣に来るのを待つ。

「おはよ、葵!」

「おはよ!」

 やっと登校した。
 はやく誘いたくてうずうずしてたんだよね。


「伊織、わたしと遊園地行かない?」

「え? 葵とふたりで?」

 伊織が目をぱちくりさせる。
 わたしの伝え方が悪くて違う風に解釈されてしまった。

「そうじゃなくて、由乃とその友だちもなんだけど……」

「あ、ならいいよ」

「……ありがとう」

 伊織は頷いてくれたけど、わたしとふたりだったら行かないみたいに聞こえて少し悲しくなった。