きみがくれた日常を




「わたし、カッコ悪かったよね。
 結局伊織に助けてもらっちゃって」

 西森さんを怒らせるだけじゃなくて、ちゃんと説得できればよかったのに。

「そんなことない! あおちゃん、かっこいいよ! 
 わたしにはできないことをいつもしてるあおちゃんはわたしの自慢なんだから!」

 由乃が自信をもって、まっすぐわたしを見た。
 ありがとう、と心の中で呟く。

 ふと"いつも"という言葉が引っかかる。
 自慢になることなにもしてないはずなのに。
 由乃の顔を見ると、なにかを言いたいけど、言いにくそうな顔をしていた。


「ごめんね、あおちゃん」

「え、なになに?」

 由乃は謝ることなにもしてないのに。
 心当たりがなくて、頭を捻る。



「わたし、あおちゃんがいちばん大変なときに傍に居られなかった」

「な、なんのこと?」

 いちばん大変なとき、それは中学のあのときの話だろうとわかった。
 でも、なんで由乃がそれを。

「知ってたんだ。あおちゃんが中学の頃……」 

 言いにくそうになりながら、話そうとする。

 由乃、知ってたんだ。
 それでも由乃が謝る必要なんてない。


「あれはわたしが勝手に由乃を遠ざけた。
 わたしが由乃を巻き込みたくなかっただけ」

 由乃はなにも罪悪感とか感じることないんだよ。

「それでも、あおちゃんがその……わたしを遠ざけたとき、悲しくて。そんなに頼りないかなって」

「由乃が頼りないなんて思ったことない! 
 ただわたしが弱かっただけ……」

「なんでもひとりで抱え込むのあおちゃんの悪い癖! 
 なんかあったら、わたしに言ってよ。
 親友なんだから!」

「由乃……」

 ほんとにいい親友をもったなと思う。
 こんなにわたしのこと想ってくれて、わたしのことずっと心配してくれてる。
 こんな親友にはきっともう出逢えない。
 大切にしないと。わたしのたったひとりの親友を。

「これからはなにかあったらちゃんと由乃に話すよ。
 だから……頼ってもいいかな?」

 頼るなんて言葉、普段使わないからなかなか口から出てこなかった。

「……あたりまえでしょ!」

 少し涙ぐんだ瞳でにっこりと由乃が笑う。
 わたしも笑って、由乃のことを抱きしめる。

「……ありがとね。これからも親友でいてほしい」

「もっちろん!」

 前より由乃に近づけた気がする。
 もっと仲良くなれた気がして、うれしかった。
 本音を通して話すほうが恥ずかしいけど、それ以上に距離は縮まっていくんだ。