きみがくれた日常を



「ゴミ捨ててくる」

「わたしもこれ片付けてくるね」

 伊織と由乃が居なくなって、松永くんとふたりになる。
 そういえば、松永くんとふたりだけで話したいことない。
 なんだか緊張する。

 でも、せっかくなら仲良くなりたいな。
 由乃の塾友だちで、伊織の親友。

 勇気を振り絞って声をかける。


「あの、松永くん。わたしと友だちになってほしい」

「え、俺はとっくにそのつもりだったけど?」

「あ、そうなの?」

 呆気なく返ってきた答えに少し動揺した。
 驚きと同時にうれしさもあった。
 松永くんがわたしのことを既に友だちだと思ってくれていた。
 それだけですごく心が温かくなった。


「うん。てか、颯太って呼んでよ。友だちならさ」

「わかった。颯太くんね」

 由乃もそう呼んでるし、これでいいよね。
 なぜか、伊織のときのより名前で呼ぶの緊張しなかった。


「改めてよろしくな、葵」

「うん」

 ふたりで見つめあって笑う。
 そんな心地いい空間だった。

「はじめてかも。男子の友だち」

 わたしが感激していると、颯太くんは不思議そうな顔をする。


「え、伊織とは違うの?」

「伊織はなんていうか……」

 わたしにとって友だちっていうより特別な存在だ。
 いつもわたしのことを救ってくれて、わたしにはもうなくてはならない存在だった。

「……なんだろ、親友かな」

 特別っていうのはなんだか照れくさくて違うことを言ってしまった。