「由乃ちゃん。スコップ貸して」
「いいよ、はい」
「ありがとう!」
ふたりの会話を聞いて、ふと思ったことを口にする。
「伊織って由乃のことちゃん付けで呼ぶんだね」
由乃も「そういえばそうだね」と頷く。
前はたしか佐倉さんって呼んでた気がするけど、あれから仲良くなったのかな。
そうだったらうれしいな。
「うん。葵の親友だし、なんか由乃ちゃんは由乃ちゃんって感じじゃない?」
「なにそれ!」
横にいた由乃がおかしそうに笑う。
伊織が言ってることはちょっとわからないけど、わたしもつられて笑った。
「えっと、やっぱ佐倉さんて呼んだほうがいい?」
「ううん。苗字で呼ばれるよりそっちのほうがいい」
「じゃあ変わらず由乃ちゃんって呼ぶ」
うん、と由乃が頷く。
すると、松永くんがいきなり手を挙げる。
「じゃあ俺も由乃ちゃんって呼ぼかな」
いきなり松永くんが冗談混じりなことを言う。
由乃はそれを聞いて、ちょっと嫌そうな顔をする。
「颯太くんはやめて! 変な感じするから」
「なんで俺だけ……」
松永くんがわざとらしく落ち込む。
その姿を見て、みんなで笑いくずれた。
わたし、この4人でいるの好きだな。
みんな優しくて、面白くて、一緒にいるとたのしい。
なんかふいにそう思った瞬間だった。