「あおちゃん! 大丈夫?」

 由乃が慌ててこっちに来て叫ぶ。

 最悪。
 髪も制服も全部びっしょり濡れた。

「ごめん、葵! 俺、そういうつもりじゃ!」

 伊織は咄嗟に謝る。
 そういうつもりじゃないならどういうつもりなの? とわたしの中には怒りが芽生えてきて、

「いーおーりー? もう絶対許さない!」

 わたしは伊織の顔に思いっきり水をかける。

「あおいっ!」

 伊織の声なんて無視してプールの中から上がった。


 それからすぐに由乃に声をかける。

「……由乃、帰ろ」

「あ、うん」

 由乃が持ってたタオルを優しくかけてくれた。
 幸い、体操服を持っていたからそれに着替えることができた。
 そして由乃に(なだ)められながら、重たい足を引きずるように家に帰った。