「わたし、この公園好きなんだ。
 小さい頃からよく来たの」

 つぎに通ったのは星空公園。
 名前の通り星空が綺麗に見える公園だ。
 ブランコ、滑り台、鉄棒しかない小さな公園だから、あまり人も来ない。
 その静かさが逆にわたしは好きだったりする。



「俺もここお気に入りの場所……だった」

 少し悲しそうに呟く。
 伊織は時々なぜか(かな)しそうな顔をする気がする。

 小6までこの街に住んでいたらしいから、もしかしてそのときになにかあったのかな。
 伊織の顔はなにかを思い出してるようだった。


「前は好きだったの?」

「うん。この場所が大好きだった。でも……」

 でも、そのあとはなに?
 そう訊かなかったのは、伊織が「これ以上は訊かないで」と言いたそうな顔をしていたから。

 わたしは話を変える。
 言いたくないことを無理には言わせたりしない。
 だれにだって秘密のひとつやふたつあるのだから。


「ねぇ、もし流れ星見えたら何願う?」

「そうだなぁ」

 すぐに笑顔が戻って、なにかたのしいことでも想像してるみたいだった。
 よかった。いつもの伊織だ。



「俺は時間を止めたい」

 (おぼろ)げな空に向かって力強くはっきり主張する。

「まぁ、叶わないんだけど……」

「時間か。でも、それいい!」

 本当にそう思う。
 時間を止めることができたら、ずっとこの場所にいられる。
 いまをこの瞬間を綴じ込められたらいいのにな。