「ねぇ、人に合わせてばっかでいいの? 
 葵はどうしたかった?」

 伊織が少し怒ったように問いかける。

「わたしは……」

 つけていたい。
 わたしはこのストラップが気に入っているから。
 大切な友だちとお揃いのものだから。

 でも、言葉はそれと全く逆なことを言う。

「べつにどうしたいとかないから」

「他人になんて言われても好きなものは好きでいいんじゃねーの?」

 少し声を上げる、伊織にビクッとする。

 わたしもそう思うよ。
 でも、他人になにか言われるくらいなら好きなものは言わないほうがいい。
 好きなものを否定されるのは辛いから。
 わたしは弱いから、そうやって自分を(まも)るしかできないんだよ。

 わたしが無言のままでいると、伊織の手がわたしの頭を軽く撫でる。

「ごめん。怖がらせるつもりはなかったんだ。
 俺は、俺だけは葵がなに言っても否定なんか絶対しないから。
 それだけは覚えといて」

「……」

 急なことに動揺したわたしはまたなにも言えず、下を向いて唇を噛み締めることしかできなかった。