Side朝陽
「そういえば、そっちは何をしてたんだ?」
俺が電話をしている間、藤岡がスマホで何かをしていたのが目に入っていた。
「ん〜……こっちも仕掛けをしようと思って」
「仕掛け?」
「これ」
藤岡が見せてくれた画面は、Twitter。
#目撃情報 と書かれている。
「まだこのハッシュタグ、使えるのかな〜と思って、調査してた」
「これ何だよ」
「ん〜……簡単に言えば、投稿にこの文字列を入れると、目撃情報を探してます〜っていうのが分かるやつ」
そう言いながら、藤岡は #目撃情報 の上に指を置き、タップした。
犬や猫などの動物の写真が出てきた。
「ほら、こうやって犬とか猫の目撃情報を求めてる情報、結構あるでしょ」
藤岡が見せてくれたその投稿は、犬が行方不明になって間も無くであろう、飼い主の悲痛の声のもの。
まさか……。
「凪波は犬猫じゃないんだぞ!」
「でも、この目撃情報のハッシュタグで、認知症で行方不明になった人も見つかってるんだよね」
「だからと言って……」
藤岡は投稿を止めようとしない。
「確か、包帯を頭に巻いていて……ああ……ほかの特徴が分からない……。顔写真は本当は載せるのは避けたかったけど、でも一か八か……」
そう言いながら、あっという間に藤岡は、最近の凪波の顔がはっきりわかる、写真……ウエディングドレスの試着姿の写真を探して、公開してしまった。
「よし、これで準備できた……あとはどれくらい効果があるか……」
「おい!勝手に何てことしてんだ!」
「とにかく、今は見つけることの方が優先でしょう」
「でも……」
このタイミングで、藤岡の声のトーンが一気に変わった。
穏やかな水が急に炎の力を借りて沸騰したかのように……。
「そもそも、東京の吉祥寺以外、海原情報聞いてないんでしょう?」
……図星だ。
「吉祥寺がある市は、14万人くらいは住民がいるみたいだけど、どうやって調べるの」
「……駅で張ってるとか……」
「1日中?ずーっと?調べてみると、吉祥寺駅って少なくとも改札は4つあるみたいだし、駅ビルの出口に至っては無数にあるみたいだけど……」
「いつの間にそういうこと調べてるんだよ」
「逆にそう言う情報を調べないで、感情のまま突っ走るのもどうかと思うけど」
「それは……」
痛いところを突いてくる。
「そもそも、海原……仕事に関しては比較的冷静になれるのに、凪波に関してだけは一気に冷静さ無くすよね」
「そうか……?」
「いつものあんただったら、少なくともこんな向こう見ずな行動はしなかった。違う?」
藤岡の視線と言葉には、俺にぐうの音も言わせない力があった。
凪波と再会してからの俺の行動は、確かにおかしい。
藤岡は、俺の表情から何かを読み取ったのか
「だから、こいつを連れてきたんだけど」
そう言って、渡されたのは……
「あさひー!」
いつのまにか目が覚めていた葉は、暗く重い空気をあっという間に吹き飛ばす程、ケラケラ笑いながら俺にひっついてきた。
「葉の前では、変なことをしないでしょう」
変なことって……。
藤岡が意味している変なことの意味は分からないが……。
「そうだな……」
こんな風に自分を慕ってくれる子供の前では、頼りがいのある男でいたい。
そんな風に思った時、藤岡が突然
「あっ!」
と大声を出した。
「どうした……」
「これ見て」
そう言って藤岡はスマホの画面を見せた。
そこには、後ろ姿ではあったが……
「一路朔夜と……凪波……」
「やっぱりそうだよね!ここ………ホテル?」
情報提供者は、藤岡にTwitterのDMというものを使って情報を送ってきた。
写真が1枚と、場所の名前だけ。
とてもシンプルだった。
そしてその場所の名前は……。
「ここだ……」
「海原?何?」
「さっき話した、凪波の主治医も……このホテルにいるらしい……」
「え?」
俺と藤岡はもう一度もらった情報を見る。
藤岡がスマホを操作して、情報提供者のアカウントを見る。
「捨て垢……」
「何だって?」
「これ、ちゃんと運用しているアカウントじゃない。昨日今日作ったばかりっぽい」
そう言われて見てみると、確かに不自然。
「そもそも、こんなに早く目撃情報ってくるものかな……」
「どう言うことだよ」
「なんか……私達の行動を知ってて……待機してた……と言っても不思議じゃない動きな気がする……」
藤岡と俺は目を合わせた。
そして声も出さずに、同じタイミングで頷く。
「海原、このホテル、何かある!」
「言われなくてもわかってる!」
そのホテルは、ナビによればあと2時間程。
夕日が完全に沈み、月が出ることには到着できるだろう。
「あ、そうだ」
俺は、自分のスマホを藤岡に託す。
「もし悠木先生って人から電話かかってきたら、すぐに出て欲しい」
「わかった」
藤岡は、自分のスマホと俺のスマホをすぐに取り出せる場所に置いてくれた。
俺は葉を藤岡に手渡しし、藤岡が葉をチャイルドシートに座らせたと同時に、アクセル全開で車を走らせた。
「そういえば、そっちは何をしてたんだ?」
俺が電話をしている間、藤岡がスマホで何かをしていたのが目に入っていた。
「ん〜……こっちも仕掛けをしようと思って」
「仕掛け?」
「これ」
藤岡が見せてくれた画面は、Twitter。
#目撃情報 と書かれている。
「まだこのハッシュタグ、使えるのかな〜と思って、調査してた」
「これ何だよ」
「ん〜……簡単に言えば、投稿にこの文字列を入れると、目撃情報を探してます〜っていうのが分かるやつ」
そう言いながら、藤岡は #目撃情報 の上に指を置き、タップした。
犬や猫などの動物の写真が出てきた。
「ほら、こうやって犬とか猫の目撃情報を求めてる情報、結構あるでしょ」
藤岡が見せてくれたその投稿は、犬が行方不明になって間も無くであろう、飼い主の悲痛の声のもの。
まさか……。
「凪波は犬猫じゃないんだぞ!」
「でも、この目撃情報のハッシュタグで、認知症で行方不明になった人も見つかってるんだよね」
「だからと言って……」
藤岡は投稿を止めようとしない。
「確か、包帯を頭に巻いていて……ああ……ほかの特徴が分からない……。顔写真は本当は載せるのは避けたかったけど、でも一か八か……」
そう言いながら、あっという間に藤岡は、最近の凪波の顔がはっきりわかる、写真……ウエディングドレスの試着姿の写真を探して、公開してしまった。
「よし、これで準備できた……あとはどれくらい効果があるか……」
「おい!勝手に何てことしてんだ!」
「とにかく、今は見つけることの方が優先でしょう」
「でも……」
このタイミングで、藤岡の声のトーンが一気に変わった。
穏やかな水が急に炎の力を借りて沸騰したかのように……。
「そもそも、東京の吉祥寺以外、海原情報聞いてないんでしょう?」
……図星だ。
「吉祥寺がある市は、14万人くらいは住民がいるみたいだけど、どうやって調べるの」
「……駅で張ってるとか……」
「1日中?ずーっと?調べてみると、吉祥寺駅って少なくとも改札は4つあるみたいだし、駅ビルの出口に至っては無数にあるみたいだけど……」
「いつの間にそういうこと調べてるんだよ」
「逆にそう言う情報を調べないで、感情のまま突っ走るのもどうかと思うけど」
「それは……」
痛いところを突いてくる。
「そもそも、海原……仕事に関しては比較的冷静になれるのに、凪波に関してだけは一気に冷静さ無くすよね」
「そうか……?」
「いつものあんただったら、少なくともこんな向こう見ずな行動はしなかった。違う?」
藤岡の視線と言葉には、俺にぐうの音も言わせない力があった。
凪波と再会してからの俺の行動は、確かにおかしい。
藤岡は、俺の表情から何かを読み取ったのか
「だから、こいつを連れてきたんだけど」
そう言って、渡されたのは……
「あさひー!」
いつのまにか目が覚めていた葉は、暗く重い空気をあっという間に吹き飛ばす程、ケラケラ笑いながら俺にひっついてきた。
「葉の前では、変なことをしないでしょう」
変なことって……。
藤岡が意味している変なことの意味は分からないが……。
「そうだな……」
こんな風に自分を慕ってくれる子供の前では、頼りがいのある男でいたい。
そんな風に思った時、藤岡が突然
「あっ!」
と大声を出した。
「どうした……」
「これ見て」
そう言って藤岡はスマホの画面を見せた。
そこには、後ろ姿ではあったが……
「一路朔夜と……凪波……」
「やっぱりそうだよね!ここ………ホテル?」
情報提供者は、藤岡にTwitterのDMというものを使って情報を送ってきた。
写真が1枚と、場所の名前だけ。
とてもシンプルだった。
そしてその場所の名前は……。
「ここだ……」
「海原?何?」
「さっき話した、凪波の主治医も……このホテルにいるらしい……」
「え?」
俺と藤岡はもう一度もらった情報を見る。
藤岡がスマホを操作して、情報提供者のアカウントを見る。
「捨て垢……」
「何だって?」
「これ、ちゃんと運用しているアカウントじゃない。昨日今日作ったばかりっぽい」
そう言われて見てみると、確かに不自然。
「そもそも、こんなに早く目撃情報ってくるものかな……」
「どう言うことだよ」
「なんか……私達の行動を知ってて……待機してた……と言っても不思議じゃない動きな気がする……」
藤岡と俺は目を合わせた。
そして声も出さずに、同じタイミングで頷く。
「海原、このホテル、何かある!」
「言われなくてもわかってる!」
そのホテルは、ナビによればあと2時間程。
夕日が完全に沈み、月が出ることには到着できるだろう。
「あ、そうだ」
俺は、自分のスマホを藤岡に託す。
「もし悠木先生って人から電話かかってきたら、すぐに出て欲しい」
「わかった」
藤岡は、自分のスマホと俺のスマホをすぐに取り出せる場所に置いてくれた。
俺は葉を藤岡に手渡しし、藤岡が葉をチャイルドシートに座らせたと同時に、アクセル全開で車を走らせた。