Side実鳥
私の家は、どちらかといえば放任主義。
子供のことは、二の次。
だから進路のことも
「好きにすれば」
の一言だけ。
気がつけば、子供に内緒で勝手に夫婦だけで旅行に行く……ということもしばしば。
おかげでBLの同人誌を書くことも自由にできたので、そういうところだけは、良かった……とは思う。
でもやっぱり……寂しいと思わなかった、と言えばこれも嘘になる。
だから、自分に子供ができた時は、夫婦で一緒に子供を可愛がりたい。
それができる人と結婚したい。
そんな風には軽く夢は見ていた。
もちろん、同人誌を書き続けられることができれば、もっと最高だったかもしれないが。
まあ結局、事故みたいな出来事で結婚した相手は、全てにおいて最低で、中途半端野郎だったので、そんな細やかだと思っていた小さな夢ですら、現実には難しいということは、突きつけられたわけだ、けれども。
今、子供を授かってしまった。
その子供は、自分が嫌だから……と放り投げることが許されない。
子供というのは、生きた責任だ……と、時折怖くなることもある。
自分の育て方が正しいのか、自信を無くすときの方がずっと多い。
だからこそ、子供が……葉が、自分に笑いかけてくれることが、何よりも嬉しい。
この笑顔を守るにはどうすればいいか、を自分のことは二の次で考える。
そんな自分がいたなんて、初めて知った
葉という名前をつけたのは、元旦那。
私の名前に実が入っているからという、呆れてしまうほどの単純な理由だったけれど、私はその名付けだけは感謝している。
元気な緑色で見ている誰かを元気にさせる。
秋には綺麗に色づいて、誰かを魅了する。
枯れてもなお、地面の養分として次に命を繋いでいく。
そしてまた春になり芽吹く。
まさに、命の名前。
そういえば、凪波はいつだったか言っていた。
「私の名前はさ、鎖のような気がする」
最初の出だしは、こんな感じだっただろうか。
「いや、我々腐女子だから」
決してボケようとして出てきた言葉では、ない。
「そう言うことじゃなくって!」
と、凪波にはお決まりのように突っ込まれたが、凪波はそのまま言葉を続けた。
「波ってさ、一度遠くに行ったと思ったら、また引き寄せられるじゃん?」
「まあ、そうだね」
「なんかさ……私の名前って、そう言う風に生きろっていう意味でつけたのかなぁ……」
「そう言う風って?」
凪波が言おうとしていることの意味を掴みかねたので聞いてみた。
凪波は一瞬何かを言おうとしたが、悲しそうな目で首を振った。
「……ううん、なんでもない」
名前の話は、これで終わり。
高校の頃は分かってあげられなかった。
けど、人の親になった今なら、あんたが何に苦しんでたのか、少しわかった気がする。
名前は、子供への親からの願いであり、親の思想そのものであり、そして子供を形作る呪文……。
18歳だ……と思っている凪波に、子持ちになった、今の私だから話せること、きっとある。
だから凪波、お願いだから早まらないで。
何故か、そんな嫌な予感がよぎって、目が覚めた。
私の家は、どちらかといえば放任主義。
子供のことは、二の次。
だから進路のことも
「好きにすれば」
の一言だけ。
気がつけば、子供に内緒で勝手に夫婦だけで旅行に行く……ということもしばしば。
おかげでBLの同人誌を書くことも自由にできたので、そういうところだけは、良かった……とは思う。
でもやっぱり……寂しいと思わなかった、と言えばこれも嘘になる。
だから、自分に子供ができた時は、夫婦で一緒に子供を可愛がりたい。
それができる人と結婚したい。
そんな風には軽く夢は見ていた。
もちろん、同人誌を書き続けられることができれば、もっと最高だったかもしれないが。
まあ結局、事故みたいな出来事で結婚した相手は、全てにおいて最低で、中途半端野郎だったので、そんな細やかだと思っていた小さな夢ですら、現実には難しいということは、突きつけられたわけだ、けれども。
今、子供を授かってしまった。
その子供は、自分が嫌だから……と放り投げることが許されない。
子供というのは、生きた責任だ……と、時折怖くなることもある。
自分の育て方が正しいのか、自信を無くすときの方がずっと多い。
だからこそ、子供が……葉が、自分に笑いかけてくれることが、何よりも嬉しい。
この笑顔を守るにはどうすればいいか、を自分のことは二の次で考える。
そんな自分がいたなんて、初めて知った
葉という名前をつけたのは、元旦那。
私の名前に実が入っているからという、呆れてしまうほどの単純な理由だったけれど、私はその名付けだけは感謝している。
元気な緑色で見ている誰かを元気にさせる。
秋には綺麗に色づいて、誰かを魅了する。
枯れてもなお、地面の養分として次に命を繋いでいく。
そしてまた春になり芽吹く。
まさに、命の名前。
そういえば、凪波はいつだったか言っていた。
「私の名前はさ、鎖のような気がする」
最初の出だしは、こんな感じだっただろうか。
「いや、我々腐女子だから」
決してボケようとして出てきた言葉では、ない。
「そう言うことじゃなくって!」
と、凪波にはお決まりのように突っ込まれたが、凪波はそのまま言葉を続けた。
「波ってさ、一度遠くに行ったと思ったら、また引き寄せられるじゃん?」
「まあ、そうだね」
「なんかさ……私の名前って、そう言う風に生きろっていう意味でつけたのかなぁ……」
「そう言う風って?」
凪波が言おうとしていることの意味を掴みかねたので聞いてみた。
凪波は一瞬何かを言おうとしたが、悲しそうな目で首を振った。
「……ううん、なんでもない」
名前の話は、これで終わり。
高校の頃は分かってあげられなかった。
けど、人の親になった今なら、あんたが何に苦しんでたのか、少しわかった気がする。
名前は、子供への親からの願いであり、親の思想そのものであり、そして子供を形作る呪文……。
18歳だ……と思っている凪波に、子持ちになった、今の私だから話せること、きっとある。
だから凪波、お願いだから早まらないで。
何故か、そんな嫌な予感がよぎって、目が覚めた。