Side朔夜
僕は、自分が1番凪波のことを知っていると思っていた。
わかっていると、思っていた。
でもそれは、ただの驕りだった。
海原の顔が浮かぶ。
憎しみを隠さない彼の表情の意味を、ようやく理解した今、迷いが生まれた。
凪波は、自分勝手な僕に愛想をつかしたのかもしれない。
だから僕の前から消えたのかもしれない。
記憶を無くしたのが偶然だったとしても……もし凪波にとっては消したい過去に、僕がなっていたとしたら……?
どうすれば良かった?
仕事を減らせば良かったのか?
でも彼女は、僕が仕事をすることを望んだ。
もっと彼女の話を聞けば良かったのか?
でも彼女は、僕が何かを聞いても、逆に僕のことばかりを気にしていた。
……考えても考えても、正解が見えない。
アナウンスが響く。
間も無く、電車がやってくる。
この電車に乗ってしまった後、僕はもう1度凪波に会うことができるのだろうか。
だけど、ここに来る時に持っていた自信は、あっという間に吹き飛ばされた。
凪波に大事なことを打ち明けてもらえないほどの存在が僕。
そして……彼女の記憶からあっという間に消されてしまった。
それはつまり、彼女にとって僕という存在は……それだけということ……?
電車が滑り込んでくる。
まばらに人が降りてくる。
行かなくては。
声優、一路朔夜に戻らなくては。
体が重い。
海原の……病院で最後に一瞬だけ見せた勝ち誇った顔が、頭から離れない。
僕は……君を失うのか?
僕は……君を離さないといけないのか?
僕は……君を失うことができるのか……?
嫌な予感がよぎった、その時。
僕が電車に乗り込み、まさに発車ベルが鳴り終わろうとしたタイミングだった。
「待って!!!」
その声を聞いて反射的に振り返ると、病院にいたはずの凪波が飛び込んできた。
それと同時に、扉が閉まり、電車が動き出した。
僕は、自分が1番凪波のことを知っていると思っていた。
わかっていると、思っていた。
でもそれは、ただの驕りだった。
海原の顔が浮かぶ。
憎しみを隠さない彼の表情の意味を、ようやく理解した今、迷いが生まれた。
凪波は、自分勝手な僕に愛想をつかしたのかもしれない。
だから僕の前から消えたのかもしれない。
記憶を無くしたのが偶然だったとしても……もし凪波にとっては消したい過去に、僕がなっていたとしたら……?
どうすれば良かった?
仕事を減らせば良かったのか?
でも彼女は、僕が仕事をすることを望んだ。
もっと彼女の話を聞けば良かったのか?
でも彼女は、僕が何かを聞いても、逆に僕のことばかりを気にしていた。
……考えても考えても、正解が見えない。
アナウンスが響く。
間も無く、電車がやってくる。
この電車に乗ってしまった後、僕はもう1度凪波に会うことができるのだろうか。
だけど、ここに来る時に持っていた自信は、あっという間に吹き飛ばされた。
凪波に大事なことを打ち明けてもらえないほどの存在が僕。
そして……彼女の記憶からあっという間に消されてしまった。
それはつまり、彼女にとって僕という存在は……それだけということ……?
電車が滑り込んでくる。
まばらに人が降りてくる。
行かなくては。
声優、一路朔夜に戻らなくては。
体が重い。
海原の……病院で最後に一瞬だけ見せた勝ち誇った顔が、頭から離れない。
僕は……君を失うのか?
僕は……君を離さないといけないのか?
僕は……君を失うことができるのか……?
嫌な予感がよぎった、その時。
僕が電車に乗り込み、まさに発車ベルが鳴り終わろうとしたタイミングだった。
「待って!!!」
その声を聞いて反射的に振り返ると、病院にいたはずの凪波が飛び込んできた。
それと同時に、扉が閉まり、電車が動き出した。