Side朔夜

海原と、悠木と名乗る医師が言葉を交わす時も。
凪波の家族が加わった時も。
僕だけ、異質に思えた。

凪波の世界は、こんなにも僕が知らないことが多い。
凪波の世界は、あっという間に僕が知らない間に塗り替えられていく。
その事実が、息が止まるほど僕を苦しくさせる。

凪波の母親に
「あなた誰?」
と聞かれた時、本当なら名前を名乗るだけで良かったのだろう。

ちゃんと正式に「凪波の恋人」であると言いたかった相手。
認められたかった相手。
でも、少なくとも僕は、この世界にはいない。
その出来事が、僕にどんどん自信を失わせていく。

悠木という医者は、そんな僕の気持ちの気づいていたのだろうか。
それとも本当に僕も世界の一員だと、勘違いしただけなのだろうか。
凪波について語られるという、彼の診察室に僕も入るように指示された。

凪波の親からは
「なんでこの人まで……!」
と拒否をされたが、海原が
「いいじゃないですか、聞いてもらいましょう」
と説得をしていた。

そもそも、凪波の親は僕と凪波の関係を知っているのか?
言ったのは……海原か?
明らかに、凪波の親の目には、僕への憎しみが宿っている。

何を言った?
僕は、今、彼らにどう思われている?

……その答えは、すぐに分かった。
そして僕は……彼らの僕への悪意の本当の理由を知ることになる。