Side朝陽
「あらー!!!こんなイケメンさん、どうしたん!?」
駐車場に車を停めて早々に、玄関から母がひょっこり顔を出してきた。
いつもならもっと早く帰ってきたはずの俺が、連絡無しで夜中帰宅になったもんだから、心配して外に出てきた……ということなのだろう。
ただ、母の格好はと言えば、すでに風呂に入った後なのだろう、すっぴん、パジャマ姿、カーラーを巻いている状態だったので……。
「やーだー!もう朝陽ったら!こーんなイケメンさん連れてくんなら、連絡くらい寄越しなさい!もっとちゃんとおめかししたかったわぁ……」
と思いっきり殴られた後に
「あらーほんとイケメンさん……お名前は?朝陽のお友達なの?家に泊まっていくの!?やだどーしましょう!!お布団綺麗なのあったかしら!」
「母さん……」
凪波はともかく……初対面の一路朔夜に至っては明らかにドン引きしているのが分かる。
凪波も、軽く引いている。
「俺ら、オフィスのソファ使うから。とっとと母さんは寝なよ」
「あ、そうよね!お母さんこんな格好で失礼だったわよね!着替えなきゃ!」
そうじゃない。そこじゃない。
この周辺じゃ、年齢が若い人間ともなかなか会えず、じいさんばあさんとの接触率が多い。
そんな中での一路の顔だ。……同じ男として比べられたくはないが、自分の母が人生で1度も見たことがないような、少女のような顔をしているのは……息子としてはできれば見たくなかった。
「あの、お母様ですか?」
一路朔夜が、微笑む。母は、頬に手を当てて
「どうしましょう……どうしましょう……」
と狼狽えている。
「僕、朝陽さんと凪波さんのお友達の、一路、と申します。こんな夜分遅くに来てしまい申し訳ありませんでした」
「そんなそんな!こーんな辺鄙なとこに来ていただいて……朝陽も、こんな素敵なお友達いるなら、早く紹介しなさいよ!ほんと!気が利かない子ね!」
……俺ら知り合ったの数時間前だからな。
ばしん!と母の馬鹿力で背中を叩かれる。
「いってえ……!」
「ほらほら、こんな外に二人を立たせておかないで、早く中に入れなさい」
誰のせいで外に立ちっぱなしだと思ってるんだ。
母は舞い上がったかのように玄関の中に入ってしまう。
このテンションは……。
「凪波、お前、この時間、母さんのアップルパイ食える余裕あるか」
「え!?うーん……おばさんのアップルパイは好きだけど……」
「あの調子じゃ、アップルパイ焼きかねない。下手すると、ありとあらゆるりんごの菓子作り始める」
あのテンションなら、それくらいはやりかねない。
「だからさ、母さんが変なことしないか見張っててくれないか」
それも理由ではあるけれど。
「えっ、でも……」
凪波はちらりと一路を見る。
やはり一路が気になるのだろう。
一路は、凪波のその視線に気づき、微笑む。
凪波は、頬を染め、視線をそらせ、俺に耳打ちする。
「この人が本当に声優さんなのか、声優ならどの作品に出てるのか聞き出して、あとサインもらって」
と矢継ぎ早に、小声で話す。こういうところだけは、高校時代の凪波そのままだな……と、安心したような、少々虚しいような。俺と一緒の時は、いつも不安な様子を隠しきれていないというのに。
サインはともかく、他の2つはググればすぐ出てくるとは思うが、今の凪波はきっとwikipediaもうまく操作できないので
「わかった、わかったから」
「ほんとだよ!絶対だよ!」
そう言って、凪波も母に続いて玄関の中に入った。
「おばさーん!あのねー……」
と、母に呼びかけている凪波の声が消えるのを確認してから、俺は一路と向き合う。
一路は、凪波と母に向けていた表情を一変させ、するどい目つきで俺を見ている。
油断すると、すぐに射抜かれそうな眼光に、俺は一瞬怯みそうになる。
凪波の様子から、今の凪波の気持ちが見えない。
……凪波………さっきこいつに抱き締められてたのは……気にしてないのか……?
俺が触れようとすると、戸惑った様子を見せることが多いのに、こいつは平気だと言うのか?
だからこそ、今凪波と一路を同じ空間に居させたくない。
「こっちに来い」
俺は方向を指さしてから、その方向に向かって歩き始める。
一路は黙って俺についてくる。
オフィスは、ここから歩いて10秒くらいのところにある。
そこであれば、邪魔者はしばらくは入ってこないだろう。
まず、俺とこいつが話す。
「あらー!!!こんなイケメンさん、どうしたん!?」
駐車場に車を停めて早々に、玄関から母がひょっこり顔を出してきた。
いつもならもっと早く帰ってきたはずの俺が、連絡無しで夜中帰宅になったもんだから、心配して外に出てきた……ということなのだろう。
ただ、母の格好はと言えば、すでに風呂に入った後なのだろう、すっぴん、パジャマ姿、カーラーを巻いている状態だったので……。
「やーだー!もう朝陽ったら!こーんなイケメンさん連れてくんなら、連絡くらい寄越しなさい!もっとちゃんとおめかししたかったわぁ……」
と思いっきり殴られた後に
「あらーほんとイケメンさん……お名前は?朝陽のお友達なの?家に泊まっていくの!?やだどーしましょう!!お布団綺麗なのあったかしら!」
「母さん……」
凪波はともかく……初対面の一路朔夜に至っては明らかにドン引きしているのが分かる。
凪波も、軽く引いている。
「俺ら、オフィスのソファ使うから。とっとと母さんは寝なよ」
「あ、そうよね!お母さんこんな格好で失礼だったわよね!着替えなきゃ!」
そうじゃない。そこじゃない。
この周辺じゃ、年齢が若い人間ともなかなか会えず、じいさんばあさんとの接触率が多い。
そんな中での一路の顔だ。……同じ男として比べられたくはないが、自分の母が人生で1度も見たことがないような、少女のような顔をしているのは……息子としてはできれば見たくなかった。
「あの、お母様ですか?」
一路朔夜が、微笑む。母は、頬に手を当てて
「どうしましょう……どうしましょう……」
と狼狽えている。
「僕、朝陽さんと凪波さんのお友達の、一路、と申します。こんな夜分遅くに来てしまい申し訳ありませんでした」
「そんなそんな!こーんな辺鄙なとこに来ていただいて……朝陽も、こんな素敵なお友達いるなら、早く紹介しなさいよ!ほんと!気が利かない子ね!」
……俺ら知り合ったの数時間前だからな。
ばしん!と母の馬鹿力で背中を叩かれる。
「いってえ……!」
「ほらほら、こんな外に二人を立たせておかないで、早く中に入れなさい」
誰のせいで外に立ちっぱなしだと思ってるんだ。
母は舞い上がったかのように玄関の中に入ってしまう。
このテンションは……。
「凪波、お前、この時間、母さんのアップルパイ食える余裕あるか」
「え!?うーん……おばさんのアップルパイは好きだけど……」
「あの調子じゃ、アップルパイ焼きかねない。下手すると、ありとあらゆるりんごの菓子作り始める」
あのテンションなら、それくらいはやりかねない。
「だからさ、母さんが変なことしないか見張っててくれないか」
それも理由ではあるけれど。
「えっ、でも……」
凪波はちらりと一路を見る。
やはり一路が気になるのだろう。
一路は、凪波のその視線に気づき、微笑む。
凪波は、頬を染め、視線をそらせ、俺に耳打ちする。
「この人が本当に声優さんなのか、声優ならどの作品に出てるのか聞き出して、あとサインもらって」
と矢継ぎ早に、小声で話す。こういうところだけは、高校時代の凪波そのままだな……と、安心したような、少々虚しいような。俺と一緒の時は、いつも不安な様子を隠しきれていないというのに。
サインはともかく、他の2つはググればすぐ出てくるとは思うが、今の凪波はきっとwikipediaもうまく操作できないので
「わかった、わかったから」
「ほんとだよ!絶対だよ!」
そう言って、凪波も母に続いて玄関の中に入った。
「おばさーん!あのねー……」
と、母に呼びかけている凪波の声が消えるのを確認してから、俺は一路と向き合う。
一路は、凪波と母に向けていた表情を一変させ、するどい目つきで俺を見ている。
油断すると、すぐに射抜かれそうな眼光に、俺は一瞬怯みそうになる。
凪波の様子から、今の凪波の気持ちが見えない。
……凪波………さっきこいつに抱き締められてたのは……気にしてないのか……?
俺が触れようとすると、戸惑った様子を見せることが多いのに、こいつは平気だと言うのか?
だからこそ、今凪波と一路を同じ空間に居させたくない。
「こっちに来い」
俺は方向を指さしてから、その方向に向かって歩き始める。
一路は黙って俺についてくる。
オフィスは、ここから歩いて10秒くらいのところにある。
そこであれば、邪魔者はしばらくは入ってこないだろう。
まず、俺とこいつが話す。