Side悠木
「ぼっちゃま。1つ苦言を宜しいでしょうか」
「私が許可しなければ苦言を言わないでくれるのか?」
「では失礼して」
「やっぱり言いたいんだな」
「あれはやりすぎだったのではないでしょうか」
「あれって言うのは?」
「一路様と海原様の通話の件です」
「ああ」
「あの内容を録音して、そのままTwitterの方にあげるのはやはりやりすぎだったのでは?」
「何故、そう思う?」
「……あれがなければ、海原様は今のような苦労をしなくても済んだのではないかと」
山田は、海原のことをひどく気に入っていたのは知っていた。
山田の好みの男は、真面目で愚直に仕事をこなす青年。
そういう青年こそ、日本の未来を背負うにふさわしいと、新聞を見ながら年寄りらしくぼやいているのを、私が知らないはずはなかった。
「だからだ」
「は?」
「苦労をすべきと思ったから、あれを流したんだ」
私の言い分に、山田は大きくため息をついてから
「ぼっちゃまは、海原様のことを酷く嫌っていましたよね。最初から」
私は、その問いかけにはあえて答えず、紅茶を一口飲んで口内を潤した。
「何故そこまで海原様を追い詰めたのですか?彼は有能な人材として、悠木財閥がヘッドハントしても良かったほどですが」
「そうだな。あいつらが好きそうな気質は持っているな」
私は、一気に紅茶を飲み干してしまう。
この紅茶は、冷めると不味くなる。
そんな紅茶をこれ以上味わうのは、ごめんだった。
「だから、潰したと……?」
「潰しただなんて、大袈裟な。ただ少し、世間の厳しさを思い知らせてあげたほうがいいと思っただけだ。……明らかに、凪波さんや一路朔夜とは、人生における経験値が違いすぎる。彼らと対等に渡り歩くべき人間ではないと、思ったからさ」
「それなら、最初から言葉でお伝えすれば済むだけだったのでは。ここまで回りくどいことをする必要はなかったのではないでしょうか」
「口だけで言うことを聞かないから、彼はこんなところまでやってきたんだ。おもちゃをとりあげられた子供のようにな。……まるで、彼女の子供のように」
「藤岡様と葉様のことですね」
「そうだ。……山田、あの二人の所在はもう掴んでいるのか?」
「はい。秘密裏にではありますが、お二人が生活に困らないようにサポートする手配は整えてあります」
「そうか。国は……信用できないからな」
「ぼっちゃまは藤岡様にはお優しいんですね。その優しさを、少しでも海原様に向けていただければ、有能な若者のスキルを悠木財閥で使うことができたかと思うと……」
「しつこいな。……実鳥さんは特別さ」
私は、つい先日リニューアルしたばかりの雪穂を撫でる。
皮膚の触感を雪穂で感じるのは、もう長いことなかったから、やめるにやめられない。
「ぼっちゃま。1つ苦言を宜しいでしょうか」
「私が許可しなければ苦言を言わないでくれるのか?」
「では失礼して」
「やっぱり言いたいんだな」
「あれはやりすぎだったのではないでしょうか」
「あれって言うのは?」
「一路様と海原様の通話の件です」
「ああ」
「あの内容を録音して、そのままTwitterの方にあげるのはやはりやりすぎだったのでは?」
「何故、そう思う?」
「……あれがなければ、海原様は今のような苦労をしなくても済んだのではないかと」
山田は、海原のことをひどく気に入っていたのは知っていた。
山田の好みの男は、真面目で愚直に仕事をこなす青年。
そういう青年こそ、日本の未来を背負うにふさわしいと、新聞を見ながら年寄りらしくぼやいているのを、私が知らないはずはなかった。
「だからだ」
「は?」
「苦労をすべきと思ったから、あれを流したんだ」
私の言い分に、山田は大きくため息をついてから
「ぼっちゃまは、海原様のことを酷く嫌っていましたよね。最初から」
私は、その問いかけにはあえて答えず、紅茶を一口飲んで口内を潤した。
「何故そこまで海原様を追い詰めたのですか?彼は有能な人材として、悠木財閥がヘッドハントしても良かったほどですが」
「そうだな。あいつらが好きそうな気質は持っているな」
私は、一気に紅茶を飲み干してしまう。
この紅茶は、冷めると不味くなる。
そんな紅茶をこれ以上味わうのは、ごめんだった。
「だから、潰したと……?」
「潰しただなんて、大袈裟な。ただ少し、世間の厳しさを思い知らせてあげたほうがいいと思っただけだ。……明らかに、凪波さんや一路朔夜とは、人生における経験値が違いすぎる。彼らと対等に渡り歩くべき人間ではないと、思ったからさ」
「それなら、最初から言葉でお伝えすれば済むだけだったのでは。ここまで回りくどいことをする必要はなかったのではないでしょうか」
「口だけで言うことを聞かないから、彼はこんなところまでやってきたんだ。おもちゃをとりあげられた子供のようにな。……まるで、彼女の子供のように」
「藤岡様と葉様のことですね」
「そうだ。……山田、あの二人の所在はもう掴んでいるのか?」
「はい。秘密裏にではありますが、お二人が生活に困らないようにサポートする手配は整えてあります」
「そうか。国は……信用できないからな」
「ぼっちゃまは藤岡様にはお優しいんですね。その優しさを、少しでも海原様に向けていただければ、有能な若者のスキルを悠木財閥で使うことができたかと思うと……」
「しつこいな。……実鳥さんは特別さ」
私は、つい先日リニューアルしたばかりの雪穂を撫でる。
皮膚の触感を雪穂で感じるのは、もう長いことなかったから、やめるにやめられない。



