Side悠木
1つのプロジェクトを終わらせた後の紅茶は、実に味わい深い。
私は今日も、雪穂の隣で山田が淹れた極上の一杯を楽しんでいる。
今日の茶はひどく体に染みる味がした。
「大変お疲れ様でした。清ぼっちゃま」
「やめてくれ。もう、ぼっちゃまという歳ではない」
「私に言わせれば、ぼっちゃまはいつまでもぼっちゃまですよ」
そう言いながら、空いたカップにお代わりを注ぐ山田に、私は苦笑するしかできない。
彼は、私がしてきた全てを見てきた。
何年、何十年とかけて取り組んできた全てを。
そして結果も……。
「また、情報操作しますか?」
「そうだな、頼む」
「承知いたしました」
山田は、私が生まれた時から悠木家に仕えている有能すぎる執事。
私よりずっと、ありとあらゆる関係各所に顔がきく。
山田ができないことは、生物学的に不可能な女性の体を持たないとできない出産や授乳くらいじゃないか、と本気で私は思っている。
「それで山田。例の件はどうだった?」
「はい。まず、海原様のりんご園についてですが、やはりあの出来事以降、人が寄り付かなくなったそうです。海原様のご両親も、次々とご病気にかかり、今はそれぞれ入院なさっているとのこと」
「そうか。他には?」
「従業員は全員解雇。今は海原様お一人がご尽力されている様子でした」
「なるほど。彼の様子は?」
「淡々と、業務をこなしているようには見えましたが、やはりあの土地柄もあるのか……」
「そうか」
私は、次言うべき言葉を考えながら、山田が淹れた新しい紅茶を飲み干す。
少しだけ、苦味が強い気がした。
1つのプロジェクトを終わらせた後の紅茶は、実に味わい深い。
私は今日も、雪穂の隣で山田が淹れた極上の一杯を楽しんでいる。
今日の茶はひどく体に染みる味がした。
「大変お疲れ様でした。清ぼっちゃま」
「やめてくれ。もう、ぼっちゃまという歳ではない」
「私に言わせれば、ぼっちゃまはいつまでもぼっちゃまですよ」
そう言いながら、空いたカップにお代わりを注ぐ山田に、私は苦笑するしかできない。
彼は、私がしてきた全てを見てきた。
何年、何十年とかけて取り組んできた全てを。
そして結果も……。
「また、情報操作しますか?」
「そうだな、頼む」
「承知いたしました」
山田は、私が生まれた時から悠木家に仕えている有能すぎる執事。
私よりずっと、ありとあらゆる関係各所に顔がきく。
山田ができないことは、生物学的に不可能な女性の体を持たないとできない出産や授乳くらいじゃないか、と本気で私は思っている。
「それで山田。例の件はどうだった?」
「はい。まず、海原様のりんご園についてですが、やはりあの出来事以降、人が寄り付かなくなったそうです。海原様のご両親も、次々とご病気にかかり、今はそれぞれ入院なさっているとのこと」
「そうか。他には?」
「従業員は全員解雇。今は海原様お一人がご尽力されている様子でした」
「なるほど。彼の様子は?」
「淡々と、業務をこなしているようには見えましたが、やはりあの土地柄もあるのか……」
「そうか」
私は、次言うべき言葉を考えながら、山田が淹れた新しい紅茶を飲み干す。
少しだけ、苦味が強い気がした。



