お願い、私を見つけないで 〜誰がお前を孕ませた?/何故君は僕から逃げた?〜

Side朝陽

「お前が考えた方法では、結局凪波は救えないってことだよ」

我ながら偉そうなセリフだと思った。
自分のことを棚に上げまくっている。
でも、言ってやりたかった。
どうしても。

「じゃあ、君は彼女を救えると言うのか?」
「ああ」
「どうやって」
「俺は、あいつの望みを全部叶えてやるって決めたんだ」
「僕と君とは何が違うって言うんだ!?」
「そもそもお前、凪波の本当の望みを知っているのか」

気になっていた。

「何……?」

一路のしていることは、凪波にとっては的外れになる行動だと思わずにはいられないから。

「確かに、俺は憎いと思った。お前が垂れ流しにしたあの音声を聞いて、凪波を徹底的に追い詰めたあの2人を。できるなら同じ目に遭わせてやりたいって、思ったさ」
「そうだろ!?だから僕が」
「だからそうじゃないだろ」
「何がそうじゃないんだ!?」

なんでこいつは分からないんだ!?

「凪波の気持ちはどうなんだよ!あんな、人にボコられてる音声を世界に垂れ流しにすることを、凪波が望んだと思ったのか!?」

こんな簡単なことを。

「それは……」
「俺はな、お前の生放送ずーっと見てた。だから、お前が焦った瞬間だって俺は見逃さなかったぞ。お前、凪波の裸の写真がTwitterでた時、こんなはずじゃなかったって思ったんだろ?……まさかあれも、お前の計算通りだったとか言うんじゃねえだろうな。少し想像力働かせりゃ分かるだろ」
「何を言ってる……海原……?」
「は?」
「想像力を働かせればと君は言ったな。じゃあ君は分かったのか?凪波のあんな裸の写真が出回るリスクなんて」

ここで気づいた。
俺が知っていて、一路が知らない情報。
凪波の告白ノート。
あれを目にしていれば分かるはずなんだ。
凪波が本当にしたかったこと。
それは復讐なんかじゃなくて……。

「お前はもし凪波に頼まれたら、凪波を殺せるか?」