お願い、私を見つけないで 〜誰がお前を孕ませた?/何故君は僕から逃げた?〜

Side朔夜

僕はこの放送を始める前に、山田さんから悠木に関する情報が書かれた媒体を全部見せてもらった。
そこにはこう書かれているものばかりだった。




奇跡を呼ぶ男。
誰もなし得なかった症例を治した神の手を持つ男。
人智を超えた存在。



その時は、悠木への怒りと憎しみで心が支配されていたから、頭に何も入ってこなかった。


けれど。


もしこの事実が本当ならば。
また奇跡を起こしてもらえればいいのだ。
……そのために必要なものがあるなら……何でも揃える。
例えそれが、生きた人体だったとしても。
それが、僕が導きだした凪波を取り戻すための最後のピース。
凪波を陥れた2人の体を、僕は神に生贄として捧げる。



宮川のりえ。
そして、郷森一果。
山田さんが教えてくれたこの2人には、凪波と同じ苦しみを与えてから、凪波のために残りの人生を捧げてもらう。
そう決めていたからこそ、僕は罠を張り続けた。
蜘蛛の巣のように、2人をじわじわと僕の元に引き寄せていく。


このラインの実況中継は、最後の仕上げ。
この全てが終わった頃、僕が欲しいものは絶対に手に入る。
そう確信したからこそ、僕は最後の勝負に出ることにした。



だから……海原。
僕の邪魔だけは、しないでくれよ。
ただ、凪波に見せてくれればそれでいいから。
それが、僕が決めた君の役割なんだから。