Side朝陽
こいつ……なんて言った?
「僕は一路朔夜」
「凪波のフィアンセだ」
だと?
その名前と声はアニメが好きな人間であれば1度は聞いたことはある。
どのアニメの出演キャストを見ても、必ず名前が載っているほどの超人気声優。
最近では朝のニュースのゲストに出ているのを見かけた。
なんでもない
「おはよう」
「おやすみ」
「犬も歩けば棒に当たる」
など普通のセリフやことわざを、次々と出演者である女性のお笑い芸人の耳元でささやいて
「さっ、朔夜様〜」
「あっ、ありがとうございますぅ……」
「跪きたいです〜!」
など、女性陣全員の腰をくだけさせていた。
その様子は。Twitterで爆笑と賞賛の嵐だったのは、俺も見た。
自分には、例え欲しかったとしても……死んでもできない芸当だな……と思ったのはつい最近。
なんでそんなやつが……。
ー私には、夢があるー
高校生の頃に聞いた、凪波の言葉。
あの時期の凪波は、アニメやラジオ、ゲームの話で藤岡とよく盛り上がっていた。
受け……とか攻め……とか?
リバ……とかカップリング……とか?
そう言う、意味不明な言葉を早口でよく話していたこともあった。
「何の話してるんだ?」
と割り込もうとしたら、
「男は入ってくるな!」
と、二人同時に拒否されたので、それ以上深く突っ込むことはなかったが……。
そういえば、あの時期、凪波は演劇部に入っていたな……。
もしかして……凪波の夢っていうのは……。
「凪波、お前の夢って……役者になることだったのか?」
凪波は、そのまま頷く。
やっぱりか……。
「……だから私は東京に行きたくて、ここに来たはず……だったんだけど……」
凪波が顔を上げる。
一路朔夜の顔を見ている。
どんな表情をして奴を見ているのか、俺からは見えない。
「あの……もしかして、声優さんですか?」
凪波が聞く。
一路朔夜の表情が酷く歪む。苦しそうに。
「どうして、そんな事を聞くの?」
「……声がとても綺麗で……滑舌もはっきりしてて……ちゃんと訓練受けてそう……」
凪波の回答は、一路朔夜にとって、想定外だったのだろう。
「……それだけ?ねえ、凪波?」
一路朔夜はまた一歩、静かに凪波と俺に近づいてくる。
俺は、凪波を抱えたまま、一歩後ずさる。
「こいつは、あんたのこと、知らねえんだよ。わかったら、とっとと帰れ」
俺が吠えるように言う。
「他の男に盗られるのを、僕が黙ってるはずないでしょう?」
と一路朔夜が言いながら、凪波の左手をつかむ。
「凪波。どうして君が僕のことを知らないと言うのかは、あとでじっくり聞く。でも……」
一路朔夜はそう言ったと思うと、凪波の指から、俺が贈った指輪を抜いた。
「こんな指輪、君には似合わないよ」
そう言うと、一路朔夜がホームに指輪を投げ捨てる。
「てめえ……!!黙って聞いてれば!!!!」
俺の我慢は限界を迎えた。
俺は、凪波の体を離した。
凪波はその場でしゃがみこんでしまった。
俺は、握り拳を作り、そして……
「ふざけんなよ!!!!」
あんたが凪波の子供の父親だなんて、許さねえ!!!
こいつ……なんて言った?
「僕は一路朔夜」
「凪波のフィアンセだ」
だと?
その名前と声はアニメが好きな人間であれば1度は聞いたことはある。
どのアニメの出演キャストを見ても、必ず名前が載っているほどの超人気声優。
最近では朝のニュースのゲストに出ているのを見かけた。
なんでもない
「おはよう」
「おやすみ」
「犬も歩けば棒に当たる」
など普通のセリフやことわざを、次々と出演者である女性のお笑い芸人の耳元でささやいて
「さっ、朔夜様〜」
「あっ、ありがとうございますぅ……」
「跪きたいです〜!」
など、女性陣全員の腰をくだけさせていた。
その様子は。Twitterで爆笑と賞賛の嵐だったのは、俺も見た。
自分には、例え欲しかったとしても……死んでもできない芸当だな……と思ったのはつい最近。
なんでそんなやつが……。
ー私には、夢があるー
高校生の頃に聞いた、凪波の言葉。
あの時期の凪波は、アニメやラジオ、ゲームの話で藤岡とよく盛り上がっていた。
受け……とか攻め……とか?
リバ……とかカップリング……とか?
そう言う、意味不明な言葉を早口でよく話していたこともあった。
「何の話してるんだ?」
と割り込もうとしたら、
「男は入ってくるな!」
と、二人同時に拒否されたので、それ以上深く突っ込むことはなかったが……。
そういえば、あの時期、凪波は演劇部に入っていたな……。
もしかして……凪波の夢っていうのは……。
「凪波、お前の夢って……役者になることだったのか?」
凪波は、そのまま頷く。
やっぱりか……。
「……だから私は東京に行きたくて、ここに来たはず……だったんだけど……」
凪波が顔を上げる。
一路朔夜の顔を見ている。
どんな表情をして奴を見ているのか、俺からは見えない。
「あの……もしかして、声優さんですか?」
凪波が聞く。
一路朔夜の表情が酷く歪む。苦しそうに。
「どうして、そんな事を聞くの?」
「……声がとても綺麗で……滑舌もはっきりしてて……ちゃんと訓練受けてそう……」
凪波の回答は、一路朔夜にとって、想定外だったのだろう。
「……それだけ?ねえ、凪波?」
一路朔夜はまた一歩、静かに凪波と俺に近づいてくる。
俺は、凪波を抱えたまま、一歩後ずさる。
「こいつは、あんたのこと、知らねえんだよ。わかったら、とっとと帰れ」
俺が吠えるように言う。
「他の男に盗られるのを、僕が黙ってるはずないでしょう?」
と一路朔夜が言いながら、凪波の左手をつかむ。
「凪波。どうして君が僕のことを知らないと言うのかは、あとでじっくり聞く。でも……」
一路朔夜はそう言ったと思うと、凪波の指から、俺が贈った指輪を抜いた。
「こんな指輪、君には似合わないよ」
そう言うと、一路朔夜がホームに指輪を投げ捨てる。
「てめえ……!!黙って聞いてれば!!!!」
俺の我慢は限界を迎えた。
俺は、凪波の体を離した。
凪波はその場でしゃがみこんでしまった。
俺は、握り拳を作り、そして……
「ふざけんなよ!!!!」
あんたが凪波の子供の父親だなんて、許さねえ!!!