お願い、私を見つけないで 〜誰がお前を孕ませた?/何故君は僕から逃げた?〜

Side朝陽

雲行きがおかしい。
コメント欄に好きに書き込んでいた奴らの手も、このやりとりで止まったのかもしれない。
ある時を境に、コメントが流れる量が一気に減った。
それはきっと、この2人のやりとりを一瞬たりとも見逃したくないと思っているからだろうと、俺は思った。

少なくとも、俺はそうだったから。
やらなくてはいけないことがたくさんあったはずなのに。


LINE画面

<●●>
私は事実を言っているだけです。

<一路朔夜>
本当ですか?

<●●>
せっかくわざわざ教えてあげてるのに、その言い方はないんじゃないですか。

<一路朔夜>
彼女の事務所の退所処分についてですが、今、問い合わせをしたらそんな事件はないと言ってますけど。

<●●>
……え?

<一路朔夜>
まさか僕が彼女の過去の経歴を調べてないとか思ってないでしょうね。
あなたとやりとりを始めてからすぐ、僕の優秀すぎる協力者がすぐに繋いでくれたんですよ。
その養成所とね。
そこから聞いた彼女がいた時期に起きたトラブルはたった1つだけだ。
そこの事務所に所属している声優と養成所の生徒がホテルに入る様子がネットに流れたこと。
その結果、声優を守らないといけなかった事務所側が、その生徒を退所処分にしたこと。
こんなスキャンダルの方が、ずっと大事じゃないですか。
何でそれを先に言わなかったですか。
もしこの事件にこそ彼女が関わっていたら、真っ先にこの件を挙げるはずだ。
でもあなたは、復讐の理由をわざわざでっち上げてまで、この場で彼女を誹謗中傷することを選んだ。
その理由は何ですか。
見えてますか?
既読にはなっているから、考えているんですかね。
残念ながらこの文章は全て世界に放送されています。
分かってますよね。
慌ててSNSを消してももう遅い。
言ったじゃないですか。
僕には優秀すぎる協力者が背後にいるのだと。
もう無理ですよ。
僕が何故わざわざこのラインを公開してまであなたと会話をしようとしたのか。
良い加減気づいてくださいよ。
あなたが僕達が仕掛けた罠にわざわざ引っかかったんですから。













ね、彼女と同じ養成所に通ってた郷森一果……さん?