お願い、私を見つけないで 〜誰がお前を孕ませた?/何故君は僕から逃げた?〜

Side朝陽

男に股を開いていた。
人の夢を潰した。

そんな風に、女達が凪波を罵倒していた音声を、世界に発信したあいつのせいで、凪波に関する話題も、少しずつ表へと出始めていた。
畑野という苗字と、微かに残っていた凪波の音声から、かつての凪波の声優名を探し当ててきた人が現れたのだ。

畑野実波として、一路の事務所に所属していたことは簡単に暴かれた。
それだけなら、まだマシだったろう。
問題はその直後に起きた。
誰かが凪波の写真をTwitterに投稿したのだ。
それも、ホテルに入っていく男と凪波の2ショット。
凪波は、厚化粧をして変装をしているらしかったが、わかる人にはわかってしまう。
恐らく、凪波が男に体を売っていた時のものだろう。

気持ちよかった。
いい体をしていた。

そんな感想のようなものが、匿名のアカウントで引用リツイートの形で拡散されてからが大変だった。
先ほどまで宮川のりえ叩きで盛り上がっていた空気が、今度は一斉に凪波へと矛先が向いてしまった。

「やめろ……」

俺は凪波が残したノートで、それが事実であると知っていても、実際にそういうことが行われた証拠を見せられて、吐きそうになった。
でも、それで許してはくれなくて。
今度は裸の写真が拡散された。
目などはかろうじて黒線で加工されてはいたが、比較すればすぐに特徴が一致する。
凪波と。

「あ……あ……」

ちょうどその写真は、一路でも俺でもない男に全裸で跨っていて、AVで見た騎乗位という名前の体位をしているかのように見えた。

「早く……消さなきゃ……」

誰が投稿したかを突き止めるよりもまずは、とにかくこの凪波の写真がこれ以上拡散されないようにしなくてはいけない。
でも、どうすればそれができるのか、俺にはヒントが見つからない。
スマホを持つ手は震えている。
どうするべきかの答えが、分からない。

そう思った時だった。

「うああああああああああああ!!!」

一路の叫び声が聞こえた。