Side悠木

私としては……それは非常に興味深いことだった。

「悠木先生」
「なんだい?」
「そのスマホ、俺に貸してくれませんか?」
「それは構わないが、この放送は見なくてもいいのかい?」
「いえ、そのままで大丈夫です。早く貸してください」

海原君があまりにも急かしてくるので、仕方がなく

「壊さないでくれよ」

と柄にもなく揶揄うように言ってみた。
それに対しては、何も海原君は反応してくれなかったので、ほんの少しだけ面白くないと思ってしまった。
そして、そんなやり取りが、かつての私と雪穂の……たわいもない応酬を思い出させる。

少しだけ、私がノスタルジーに浸っている間、海原君が慣れた手つきで何かをフリック入力しているようだった。

私は画面を見なくとも、彼の指の動きだけで何を打ち込んでいるか分かってしまう。
……海原君は隠したがっているようだったが。
ただ、隠したがっている相手は、私ではなく……すぐそこにいる彼の眠り姫。
正確に言えば、彼らの……だろうか。


私は、まだ一路朔夜よりはマイルドだから、彼女には伝えないで、胸に秘めておこう。
彼が打ち込んだのが


「みんな殺してやりたい。お前も」


だったとしても。