Side朝陽

※暴力的な表現が一部ありますため、苦手な方はご注意ください。






















その音声の中では、アニメや吹き替えの画面から聞こえてきそうな、現実味のない声が

「ねえ、どんな気分?」

と、ねちっこく凪波に聞いているのが聞こえた。

「うっ……」

凪波は、聞いたこともないようなうめき声をあげているのが、俺にも分かった。

「ちょっとこっちが脅したら、あっさり他の男に股開いた癖によぉ!!あははは」
「やだー畑野さん、鼻水垂らして赤ちゃんみたい。きもっ」


なんなんだよ。
お前ら、一体なんなんだよ……!!


「いっぱい記念撮影撮ってあげますね、ハイポーズ!!」
「やだ、お漏らししちゃったの。かわいそう」

やめろ……!凪波に何をした……!!

「うっ……お腹が……お腹が……」

この音声の時期には、すでに凪波は妊娠していたのだろうか。

「いいじゃない、どうせ一路朔夜の子供じゃないんでしょ?」
「どうせ殺す気だったくせに、何母親ぶってんだ……よ!」

どかっという、何かを蹴り倒す音。
それから聞こえた

「っ!!」

という、凪波がうめく声。
それが繰り返しリピートされていく。


「死ねよ」
「きしょっ!」
「死ね死ね死ね!!!!」
「社会のクズ!ゴミ!!ビッチ!!」

その言葉の後だった。
ごほっという凪波が咳き込む声の後に、びしゃっと水がしたたる音が聞こえた。
……血を吐いたのかもしれない。

そんなことを考えていると

「おい!こっちだ!」

と叫ぶ男性の声が聞こえて、救われた気持ちになった。


「やばっ」
「誰だよ通報しやがったの」
「まだまだこんなもんじゃ済まさないから」

女たちは、最後にまた凪波に攻撃をしたのかもしれない。
鈍い音の後に聞こえた凪波の

「うあっ…………」

という声はとてもか細かった。



音声はそこで途切れた。
はっと気づくと、液晶の中に映る一路の顔からは殺意が見えた。
俺は、背筋が凍り思いがした。