Side朝陽

一路が、淡々とこちらを見て話す。
その様子に、俺は違和感を覚えた。
でも同時に……もしかするとこの一路こそが、本物の……演技という飾りで隠されていない一路という人格なのかもしれないと、自然と思うことができた。

話の中身は、間違いなく凪波と一路の思い出。
一路はまだ知らない、俺と藤岡が知っている情報を照らし合わせながら、俺は一路の話を聞いていた。

凪波は、こんな一路の思いを知っていたのだろうか?
一路と凪波は、ちゃんと2人で話をしたのだろうか。
もしお互いがお互いの気持ちを打ち明けていたら……凪波はあんな風にノートに書かなかったのではないだろうか。

凪波は、一路が求める凪波を演じ続けたと書いていた。
凪波は、一路のことを自分よりずっと輝いていると書いていた。
でも実際は……一路もまた同じように、凪波のことを恩人だと表現した。

どうして、この2人はこうもチグハグだったんだろう。
もしも、どちらかが本音をぶつけてさえいれば……凪波はここまで追い込まれることはなかったんじゃないだろうか。

そんな、やりきれない気持ちに襲われながら、俺は続きを聞いていた。
俺の頬には、理由もわからない涙が伝い始めていた。



それから数分ほど、一路の告白が途切れた。
一路が……動いた。


「そんな僕が、こんな音声を聞かされたら……どんな行動を取るべきだと、みなさんは思いますか?」

それから流れた音声に、コメント欄が荒れ始めた。
そして俺は……耳を塞ぎたくなった。


凪波の悲鳴だと、すぐにわかったから。