Side朔夜

「かつて僕は誰かにこう言われたことがあります。

器は丁寧に造られた人形だと。

その人は、僕のこの見た目が好きだと言い、見た目に金を出すとも言いました。

僕は、見た目だけに価値を創られたし、その価値だけを大事にするように言われました。

でも、その部分を持たない僕は……その人達にとってゴミクズ同然だったんだと思います。

1度だけ、顔にニキビを作ったことがありました。

その時、僕はこう言われたのです。

馬鹿かお前。

生きる理由を潰す気か、と。

僕は、たった1つのニキビで、存在価値を否定されたのです。

僕が積み重ねてきた知識も能力も、全てなかったことにされたのです。

僕は、人形として、器の美しさだけを求められる人生を生かされていたのです。



そんな僕が、もう1度人間として生きることが出来るようになったのは、彼女に出会ってからでした。


ちなみにそんな彼女が、僕との初対面になんて言ったか、皆さん想像つきますか?



舐めないで。



ひどい言葉だと思いません?

でも……僕はそれだけの言葉が嬉しかったんです。

僕の見た目ではなく、僕が僕として……人間として動いた行動への反応は、本当に久しぶりだったから」