Side朝陽
一路が衝撃的な裏情報を暴露し始めてから、急激に視聴者数が伸び始めた。
あっという間に10万という数を超え、11万、12万、15万と数字が鰻登りに増えていく。
俺が少し前に見た時は、5万人ちょっとくらいしかいなかった。
テレビ番組のような、大きなセットも有名ゲストも、面白く見せる編集すらない、一路朔夜しかないコンテンツでそれだけの数を集めたという事実も、とても凄いことだとは思った。
「彼……うちの山田を、うまいこと使ってくれたな」
「どういうことですか?」
悠木先生は、くすくす笑いながら、スマホを見せてくる。
まずはTwitter。
アイコン画像なし、ヘッダー画像なし、フォローもフォロワーも0、名前はデフォルトのままの謎アカウントがたった3行の書き込みをしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一路朔夜の暴露を見たい奴はここ。
衝撃の事実が次々明るみに。
http://bi~
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ところが、たったこれだけのものにも関わらず、リツイートも引用リツイートもすでに万を超えていた。
引用リツイートの中身を見ると
「これ嘘垢?」
「釣りだろw」
というコメントもある一方で
「今ちょうどやってるぞ!」
「一路朔夜はもっとスカした奴だと思ってた」
と、この書き込みの根拠になる内容が山のように投稿され、それらもまたリツイート、引用リツイートという形で別のところに次々と拡散されていた。
こういうのを確か……。
「バズってるって……ことか?」
「海原君は、その言葉の由来を知っているかい?」
「いや……なんとなく、そう言う言葉があるくらいしか……」
悠木先生は、くすっと俺を馬鹿にするような、含みを持たせた笑みを見せたかと思うと
「Buzzは、ハチがそこら辺を煩く飛び回っていることを表す英単語だよ。何かの話題について、こうしてまとわりつくように煩く騒いでいる様子を似ているだろう?」
それが事実なのは分かっていても、同意するのを躊躇いたくなるような言い回しだった。
「一路朔夜は、自分の影響力というものをよく知っているね……。いや違うか。彼女が、そう作り込んだのかもしれないね。彼を」
悠木先生は、眠り続ける凪波を見ながらそう言った。
俺は、何だか凪波の顔を見ることができなかった。
今更ながら、凪波の過去を見たことに、罪悪感を覚えてしまったから。
その時、悠木先生のスマホから聞こえる一路の声だけが、くっきりと俺の中に入ってきた。
「だから、言いましたよね。僕には、これ以上失うものはないんですよ」
それを聞いた悠木先生は、俺に顔を向けながら、憐れむような表情でこう言った。
「もしかすると……彼が勝ってしまうかもしれませんね」
何に、と聞くのが怖かった。
一路が衝撃的な裏情報を暴露し始めてから、急激に視聴者数が伸び始めた。
あっという間に10万という数を超え、11万、12万、15万と数字が鰻登りに増えていく。
俺が少し前に見た時は、5万人ちょっとくらいしかいなかった。
テレビ番組のような、大きなセットも有名ゲストも、面白く見せる編集すらない、一路朔夜しかないコンテンツでそれだけの数を集めたという事実も、とても凄いことだとは思った。
「彼……うちの山田を、うまいこと使ってくれたな」
「どういうことですか?」
悠木先生は、くすくす笑いながら、スマホを見せてくる。
まずはTwitter。
アイコン画像なし、ヘッダー画像なし、フォローもフォロワーも0、名前はデフォルトのままの謎アカウントがたった3行の書き込みをしていた。
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一路朔夜の暴露を見たい奴はここ。
衝撃の事実が次々明るみに。
http://bi~
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ところが、たったこれだけのものにも関わらず、リツイートも引用リツイートもすでに万を超えていた。
引用リツイートの中身を見ると
「これ嘘垢?」
「釣りだろw」
というコメントもある一方で
「今ちょうどやってるぞ!」
「一路朔夜はもっとスカした奴だと思ってた」
と、この書き込みの根拠になる内容が山のように投稿され、それらもまたリツイート、引用リツイートという形で別のところに次々と拡散されていた。
こういうのを確か……。
「バズってるって……ことか?」
「海原君は、その言葉の由来を知っているかい?」
「いや……なんとなく、そう言う言葉があるくらいしか……」
悠木先生は、くすっと俺を馬鹿にするような、含みを持たせた笑みを見せたかと思うと
「Buzzは、ハチがそこら辺を煩く飛び回っていることを表す英単語だよ。何かの話題について、こうしてまとわりつくように煩く騒いでいる様子を似ているだろう?」
それが事実なのは分かっていても、同意するのを躊躇いたくなるような言い回しだった。
「一路朔夜は、自分の影響力というものをよく知っているね……。いや違うか。彼女が、そう作り込んだのかもしれないね。彼を」
悠木先生は、眠り続ける凪波を見ながらそう言った。
俺は、何だか凪波の顔を見ることができなかった。
今更ながら、凪波の過去を見たことに、罪悪感を覚えてしまったから。
その時、悠木先生のスマホから聞こえる一路の声だけが、くっきりと俺の中に入ってきた。
「だから、言いましたよね。僕には、これ以上失うものはないんですよ」
それを聞いた悠木先生は、俺に顔を向けながら、憐れむような表情でこう言った。
「もしかすると……彼が勝ってしまうかもしれませんね」
何に、と聞くのが怖かった。