Side朔夜

「僕は誓って言います。決して僕は、こんなクソなリストは使わない。君達は……どうかは知らないけどね」

僕は少しだけ視聴者を煽る言葉を使う。

「このリストに書かれている店は、世の中には出回っていない、秘密のものばかりだ。普通なら君たちのような庶民は見つけ出すことできない」

僕の煽りに、視聴者のほとんどが僕の想像通り乗っかってきた。

「知りたい」
「自慢かよ」
「DTの敵」

でもまだ、本当に欲しい言葉は出てこない。
僕は、もう少しだけこのリストについて言及することにした。

「今から、皆さんために1店ずつじっくり住所と電話番号を見せます。メモ取るなら今のうちです」

僕はカメラにリストを近づける。
1店舗ずつ、じっくりと読んでもらえるように。
このタイミングで、僕の顔は映らない。
でも僕はどんなコメントがきているかと、このカメラが今何の映像を映しているのは分かる。
だから慎重に僕の顔が写らないように、リストをカメラに映し続ける事ができる。

「どう?皆さん、メモは取れそうですか」

僕の言葉は視聴者に向けるが、僕の顔は近くに待機している山田さんに向ける。
山田さんは、僕と目が合うとすぐ、僕に彼が持っていたスマホ画面を近づけた。


欲しかった連絡が、そこには入っていた。
僕が仕掛けた、1つ目の罠だとも知らずに。