Side朔夜

今日の仕事が終わったあとに、まずは1通送ってみた。
すると意外にもすぐに返信が返ってきた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Instagram DM画面

<さく>
実鳥さんこんにちは〜。
お友達さん、ご結婚されるんですか?
おめでとうございます!

<実鳥>
今日の投稿のことですよね?
そうなんですー。もう私うれしくってうれしくって!

<さく>
いいですね〜。私も結婚式のこと思い出す〜。
いつやるんですか?

<実鳥>
本当に急な話なんですけど、来月なんですよね。
私もこの間聞いたばかりだから、ドレス入るか不安なんですよね……。ダイエットしなきゃ。

<さく>
早いですね!普通結婚式って、もう少しじっくり決めるものですよね。

<実鳥>
ほんと驚きですよね!その友人、つい最近地元に戻ってきて、幼馴染と再会して即結婚が決まったんですよね〜。どっちも知ってるから、ほんと嬉しくって!

<さく>
まるで韓国ドラマみたいですね

<実鳥>
ずっと幼馴染が友人のこと好きで好きで仕方がなかったんですよね!
私もそんな恋愛したかった〜。

<さく>
素敵なお話聞かせてくれてありがとうございました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あのりんご園の男が相手だと確証した。
海原朝陽。
ちらと、彼の、動画で見たはにかんだ笑顔を思い出す。

くそっ!

僕はスマホを床に叩きつけた。
その瞬間、ぱっと凪波と僕のツーショット……唯一の残っている凪波の写真が画面に現れる。

「凪波……」

画面の中の凪波は、ただだまって微笑んでいるだけ。
その笑顔が、他の男のものになるなんて許せない。

時計を見る。
もう、凪波の地元にいくための電車はない。
明日は早い。
いっそ仕事をサボってしまおうか、とも過ったが、そんなことをすれば今度こそ凪波を失ってしまう。

凪波は、僕が仕事を休みたいと言うのをとても嫌がった。
「そんな風にしか考えられないなら別れる」と言われたことも何度もある。

スケジュールを確認する。
よりにもよって、こう言う時に限り、重たい仕事が並んでいる。


……大丈夫、まだ時間はある。
居場所はわかった。
あとは凪波を迎える準備をもう1度して、それからでも間に合うはずだ。

少なくとも、凪波を探しにいくという目的の1つは、これで達成した。
あとは、時がくるのを待てばいい。




……この時の僕は、冷静でいられなかったのだろう。
大きなミスをしたことに、気づくことができなかった。