Side朔夜

もちろん、ただ僕がセリフを言うだけでは意味がない。
そろそろ、視聴者数の上がり方がなだらかになってきたところで、僕はリクエストの受付をやめることにした。
視聴者数とこの放送が一路朔夜本人からのものであると、リクエストのやり取りである程度確信してくれたのだろう。
視聴者からの書き込みに

「本物?」
「お笑い芸人さん、名前なんて言うんですか?」

などと言う投稿はほとんど見られなくなっていた。
視聴者数が5000人になったところで、僕は視聴者にゲームを持ちかける。


「今から、この放送の視聴者をみんなの力で10万人にして欲しい。そうしたら、僕のとっておきの秘密を暴露してあげるよ」


と。
それからすぐだった。
Twitter上ではあっという間に

「一路朔夜」
「生放送」
「秘密暴露」

の文言がトレンドランキング入りし、ものの数分で8万人まで視聴者を増やすことができた。
僕は次々と書き込みをしてくる人間の中に、少しでも多くのモンスターがいることを祈った。


そう。
人を陥れることに快感を覚える、人の皮を被った言葉を操るモンスター達をこの場に集めたかったのだ。
彼らの力を借りるため。



僕は、僕の手を汚さない。
でも、僕の声は使う。
それは凪波がくれたものだから。


今使わないで、いつ使えば良い?
君と生きるために。