Side朔夜
車が止まる。
あたりには、風俗の店やネオンが安っぽいホテルが立ち並んでいた。
「一路様。真実をお知りになりたいですか?」
「……真実?」
「凪波様があなたに隠していた真実は、この街にあります。今なら引き返すこともできます。知らないままの方が、綺麗な、あなただけの凪波様のままであなたの中に残ることでしょう。……私は、そう言う幸せもあると思います」
気のせいだろうか。
山田さんはとても悲しげに、遠くにいる別の誰かを見たような視線だった。
「でも……」
山田さんはそう言うと、スマホを数秒で手早く操作をした後で
「知らない不幸というものがあることも、私は身近で見て参りました」
「知らない……不幸……」
「知ってさえいれば、自分の意志で介入できたかもしれない運命があったはず。それを知った時の絶望がどれほど深いものか、這い上がるためにはどれだけ血を吐かなくてはいけないか……そんなことを私はずっと見て参りました」
「山田さん、あなたは……」
一体、誰の味方ですか?
そう言おうと思った時だった。
「そろそろですね」
「え?」
山田さんは、少しだけ窓を開けた。
冷たい風がすうっと、僕の頬の撫でた。
その冷たさに、寒気がした。
「一路様。私は……いえ……私達は……目的を果たすためなら誰でも良いんです。ただ、その目的を達成するためには、可能な限り罪悪感を取って差し上げたいというのが……執事としての私の願いなんです」
誰の、というのは聞く必要はないだろう。
この人が仕えているのは、ただ一人だけだろうから。
「だから……よく聞いて、見て、あなた自身の意志で判断してください」
「何を……?」
山田さんはゆっくりと僕を見る。
そして、今までで見たことないような、優しげな微笑みを僕に向けた。
「復讐をするかどうか」
山田さんがそうささやいたと同じタイミングで、僕の耳に入ってきたのは……。
「あはははは」
「マジで!?」
「私達の勝利ってやつ?」
凪波に暴力を振るった声と、全く同じ声だった。
車が止まる。
あたりには、風俗の店やネオンが安っぽいホテルが立ち並んでいた。
「一路様。真実をお知りになりたいですか?」
「……真実?」
「凪波様があなたに隠していた真実は、この街にあります。今なら引き返すこともできます。知らないままの方が、綺麗な、あなただけの凪波様のままであなたの中に残ることでしょう。……私は、そう言う幸せもあると思います」
気のせいだろうか。
山田さんはとても悲しげに、遠くにいる別の誰かを見たような視線だった。
「でも……」
山田さんはそう言うと、スマホを数秒で手早く操作をした後で
「知らない不幸というものがあることも、私は身近で見て参りました」
「知らない……不幸……」
「知ってさえいれば、自分の意志で介入できたかもしれない運命があったはず。それを知った時の絶望がどれほど深いものか、這い上がるためにはどれだけ血を吐かなくてはいけないか……そんなことを私はずっと見て参りました」
「山田さん、あなたは……」
一体、誰の味方ですか?
そう言おうと思った時だった。
「そろそろですね」
「え?」
山田さんは、少しだけ窓を開けた。
冷たい風がすうっと、僕の頬の撫でた。
その冷たさに、寒気がした。
「一路様。私は……いえ……私達は……目的を果たすためなら誰でも良いんです。ただ、その目的を達成するためには、可能な限り罪悪感を取って差し上げたいというのが……執事としての私の願いなんです」
誰の、というのは聞く必要はないだろう。
この人が仕えているのは、ただ一人だけだろうから。
「だから……よく聞いて、見て、あなた自身の意志で判断してください」
「何を……?」
山田さんはゆっくりと僕を見る。
そして、今までで見たことないような、優しげな微笑みを僕に向けた。
「復讐をするかどうか」
山田さんがそうささやいたと同じタイミングで、僕の耳に入ってきたのは……。
「あはははは」
「マジで!?」
「私達の勝利ってやつ?」
凪波に暴力を振るった声と、全く同じ声だった。