Side朔夜

「孤独……？」

孤独とは、小さな真っ暗な部屋の中、1人残されることだ。
孤独とは、話をしたいと思っても、誰も側にいてくれないことだ。
誰からも理解されないことだ。
自分が知らないところで、勝手に自分とはかけ離れた理想を作り上げられ、押し付けられることだ。
深くて暗い、星1つ見当たらない真っ暗な夜のようなもの。
どこへ向かえばいいのかすら分からない。
それが、僕が知っている孤独だ。

「馬鹿なことを言わないでください。僕は、凪波を孤独になんかしませんよ」
「何故、そう言い切れるんです？」
「僕は……凪波を求めた。欲しかった」
「それで？」

何故、この人はここまで食いついてくるのだろう。
でも、この人の目からは逃れることができない気がした。
だから僕は、考えてしまった。

「それで……それで……僕は……常に凪波の側にいたくて……それで……」
「凪波さんは、どうだったのでしょう？」
「……は？」
「本当に、それが凪波さんを孤独にしなかったのでしょうか？」
「どういう事……」
「人が本当に孤独を感じる時は、すれ違いではないでしょうか」
「すれ違い……」
「気づいて欲しいのに気づかれない。そんな期待を抱いては、裏切られる。側にいる人にすら自分を認めてもらえない。自分は世界中の誰にも認識されない。人を覚え、愛を覚えた人程こそ、堕ちる沼はより暗くもの悲しい。それこそが、孤独なのではないでしょうか」


僕は、何も言えなかった。
僕は僕が孤独になりたくなくて、必死で凪波を求めたし、抱いたし、愛してるを繰り返した。
でも、凪波はそれを受け止めるだけで、僕に同じだけ求めてもくれなかった。
そして僕はそれに……針が刺されたような小さな寂しさは覚えていた。
その度に、凪波の体温でかき消そうとしていた。


僕は、僕自身が凪波といて感じた、小さな孤独の気持ちすら打ち消そうとした。
僕たちは2人でいることこそが、世界中のどんなものよりも幸せだと、思い込みたかった。
そこに、凪波の意志も入っていると、僕は勝手に思い込んでいたのかもしれない。