Side朔夜
「何ですか……これ…………」
しゃべるために口を開けて、舌が唇に当たった。
血の味がした。
少し舐めると、ピリッとした痛みが走った。
「凪波さんのスマホに入っていたデータです」
「凪波の!?」
「万が一の時のために、録音していたのかもしれませんね。残っていた音声はこれだけではありませんでしたが」
含みがある言い方は、まるで僕自身にある事実を気づかせるためだったのかは分からない。
でも、少なくとも僕はこう解釈した。
凪波は、常に命の危険と隣り合わせだった、ということ。
山田さんは、ふっと目線を下に下げながら
「凪波さんのお話では、この日に……お子様を亡くされたそうです」
「子供…………」
海原からも聞かされていた。
凪波は妊娠していた、と。
妊娠していた事実には確かに驚いた。
けれど、妊娠した子供の父親が誰であるかは疑いようもない。
僕以外、ありえない。
ありえてたまるか。
フラグは、すでに立てていた。
長く離れなくてはいけない時期、もし僕の痕跡を残しておかなければ、凪波はいつか僕の前から去ってしまうと思った。
だから僕は、彼女の中に残したんだ。
僕の命の源を。
「これが、凪波が自殺を選んだ理由……?」
僕との子供が死んだことが、もしそうだというのなら今すぐにでも凪波に言ってやりたい。
そんなことで死んでしまわないで。
子供はいくらでも作ることができる。
僕たちさえずっと一緒にいれば。
「早く、凪波を……凪波を起こしに行かないと」
僕は、山田さんが握るハンドルを奪おうと、手を伸ばす。
やっと、凪波を取り戻す小さな光を見つけたのだから。
その光が消えてしまわない内に、早く、凪波を取り返さなくては。
「何ですか……これ…………」
しゃべるために口を開けて、舌が唇に当たった。
血の味がした。
少し舐めると、ピリッとした痛みが走った。
「凪波さんのスマホに入っていたデータです」
「凪波の!?」
「万が一の時のために、録音していたのかもしれませんね。残っていた音声はこれだけではありませんでしたが」
含みがある言い方は、まるで僕自身にある事実を気づかせるためだったのかは分からない。
でも、少なくとも僕はこう解釈した。
凪波は、常に命の危険と隣り合わせだった、ということ。
山田さんは、ふっと目線を下に下げながら
「凪波さんのお話では、この日に……お子様を亡くされたそうです」
「子供…………」
海原からも聞かされていた。
凪波は妊娠していた、と。
妊娠していた事実には確かに驚いた。
けれど、妊娠した子供の父親が誰であるかは疑いようもない。
僕以外、ありえない。
ありえてたまるか。
フラグは、すでに立てていた。
長く離れなくてはいけない時期、もし僕の痕跡を残しておかなければ、凪波はいつか僕の前から去ってしまうと思った。
だから僕は、彼女の中に残したんだ。
僕の命の源を。
「これが、凪波が自殺を選んだ理由……?」
僕との子供が死んだことが、もしそうだというのなら今すぐにでも凪波に言ってやりたい。
そんなことで死んでしまわないで。
子供はいくらでも作ることができる。
僕たちさえずっと一緒にいれば。
「早く、凪波を……凪波を起こしに行かないと」
僕は、山田さんが握るハンドルを奪おうと、手を伸ばす。
やっと、凪波を取り戻す小さな光を見つけたのだから。
その光が消えてしまわない内に、早く、凪波を取り返さなくては。