Side朔夜
※少々暴力的な表現がございます。苦手な方は次のページまでお進みください。
「あんたさあ……ふざけてる?」
それは、知らない女の声。
聞いただけで分かる、殺意が含まれた音色。
僕がかつて殺人犯を演じた時に醸し出した空気感とよく似ていた。
声自体に特徴はないが、発声はトレーニングを積んだ人間のそれだと思った。
その声の後に響いたのは、何か重たい肉のようなものを蹴った音と、蹴られたものが草の上で転がった音。
これは、外だろうか。
そんな事を考えたすぐ後に、それは聞こえた。
「うっ……」
「凪波!?」
僕が間違うはずはない。
彼女のどんな声でも、必死に聞き取り、意味を理解し、好かれようと必死にもがいた日々があるから。
「ねえ、どんな気分?自分は、人の夢を潰した癖に、あんたはのうのうとその夢を叶えたどころか一路朔夜にまんまと取り入って」
そう言った声は、また蹴った。凪波を。
凪波の漏れた息の音が、それを示していた。
「ちょっとこっちが脅したら、あっさり他の男に股開いた癖によぉ!!あははは」
「やだー畑野さん、鼻水垂らして赤ちゃんみたい。きもっ」
また別の声。
これは、聞き覚えがある。
宮川のりえだ。
凪波に敵意剥き出しで、僕に迫ってきた……未熟で魅力のかけらもない、子供。
「いっぱい記念撮影撮ってあげますね、ハイポーズ!!」
「やだ、お漏らししちゃったの。かわいそう」
「うっ……お腹が……お腹が……」
凪波が、苦しんでいた。
こんな声の凪波は、今まで1度も聞いたことがない。
「いいじゃない、どうせ一路朔夜の子供じゃないんでしょ?」
「どうせ殺す気だったくせに、何母親ぶってんだ……よ!」
「っ!!」
それからは、ただただ笑い声と、蹴り上げる音が聞こえるだけ。
そして、凪波のうめき声。
聞くに堪えない。
もしこれが目の前の光景だったならば、僕はきっとこの2人を殺していた。
これは、本当に現実なのか?
いっそこの3人のエチュードであったならば良かった。
そんな淡い期待すら抱きたくなるくらい、耳から入ってきたのは聞くに堪えない惨劇だった。
凪波の口から血を吐く音が聞こえてようやく
「おい!こっちだ!」
遠くから、男性らしき声がした。
「やばっ」
「誰だよ通報しやがったの」
宮川はちっと舌打ちをすると、最後にもう1回
「まだまだこんなもんじゃ済まさないから」
「うあっ…………」
凪波に、1番強い攻撃を何かしらの方法でしてから走り去っていった。
それからの音声データは
「救急車呼べ!」
「こりゃひどい……出血してる……」
「おい姉ちゃん、もしかして妊娠してるのか?」
という凪波を助けてくれた……らしき人々の声と、救急車のサイレンが近づいてくる音で終わった。
いっそ夢であって欲しかった。
でも……あの三人以外の人々の声は、ちゃんとした生の……演技のかけらもない声だった。
それが現実に起きたことであることの証拠だった。
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「あんたさあ……ふざけてる?」
それは、知らない女の声。
聞いただけで分かる、殺意が含まれた音色。
僕がかつて殺人犯を演じた時に醸し出した空気感とよく似ていた。
声自体に特徴はないが、発声はトレーニングを積んだ人間のそれだと思った。
その声の後に響いたのは、何か重たい肉のようなものを蹴った音と、蹴られたものが草の上で転がった音。
これは、外だろうか。
そんな事を考えたすぐ後に、それは聞こえた。
「うっ……」
「凪波!?」
僕が間違うはずはない。
彼女のどんな声でも、必死に聞き取り、意味を理解し、好かれようと必死にもがいた日々があるから。
「ねえ、どんな気分?自分は、人の夢を潰した癖に、あんたはのうのうとその夢を叶えたどころか一路朔夜にまんまと取り入って」
そう言った声は、また蹴った。凪波を。
凪波の漏れた息の音が、それを示していた。
「ちょっとこっちが脅したら、あっさり他の男に股開いた癖によぉ!!あははは」
「やだー畑野さん、鼻水垂らして赤ちゃんみたい。きもっ」
また別の声。
これは、聞き覚えがある。
宮川のりえだ。
凪波に敵意剥き出しで、僕に迫ってきた……未熟で魅力のかけらもない、子供。
「いっぱい記念撮影撮ってあげますね、ハイポーズ!!」
「やだ、お漏らししちゃったの。かわいそう」
「うっ……お腹が……お腹が……」
凪波が、苦しんでいた。
こんな声の凪波は、今まで1度も聞いたことがない。
「いいじゃない、どうせ一路朔夜の子供じゃないんでしょ?」
「どうせ殺す気だったくせに、何母親ぶってんだ……よ!」
「っ!!」
それからは、ただただ笑い声と、蹴り上げる音が聞こえるだけ。
そして、凪波のうめき声。
聞くに堪えない。
もしこれが目の前の光景だったならば、僕はきっとこの2人を殺していた。
これは、本当に現実なのか?
いっそこの3人のエチュードであったならば良かった。
そんな淡い期待すら抱きたくなるくらい、耳から入ってきたのは聞くに堪えない惨劇だった。
凪波の口から血を吐く音が聞こえてようやく
「おい!こっちだ!」
遠くから、男性らしき声がした。
「やばっ」
「誰だよ通報しやがったの」
宮川はちっと舌打ちをすると、最後にもう1回
「まだまだこんなもんじゃ済まさないから」
「うあっ…………」
凪波に、1番強い攻撃を何かしらの方法でしてから走り去っていった。
それからの音声データは
「救急車呼べ!」
「こりゃひどい……出血してる……」
「おい姉ちゃん、もしかして妊娠してるのか?」
という凪波を助けてくれた……らしき人々の声と、救急車のサイレンが近づいてくる音で終わった。
いっそ夢であって欲しかった。
でも……あの三人以外の人々の声は、ちゃんとした生の……演技のかけらもない声だった。
それが現実に起きたことであることの証拠だった。