Side悠木


雪穂。

君は、そこで一体何を見ている?

何を考えている?

君の前にいる女は、君ほど自分の身内には慈悲深くはないようだ。


それに比べて、君はどうだ。

たった1人、血を分けた母親のために、自らの死を捧げようとした。

死と引き換えに、母親への永遠の平穏を贈ろうとした。

嫉妬したよ。

そんな愛を、僕は誰からも貰った事はなかったから。


雪穂、聞こえる?

この女の哀れな叫びを。

君は、この女のことをどう思う?

きっと、呆れてしまうのではないかい?

憐れんでしまうのではないかい?

僕やこの女のように、自分主導でしか善悪を考えられない、そんな人間の事を、君は嫌がっていたから。


だけどね、雪穂。

僕は君と過ごしている間、こう思っていたんだ。

君が、自分の意志で愛を求めてくれれば良いのに。

僕の愛を、欲してくれれば良いのにって。




きっと、君の愛は強く僕をこの世界に縛り付けてくれるから。

そうすれば僕は、2度と死を望まなくて済むと、思っていたから。


ねえ雪穂。

君がもし新しい身体に生まれ変わるとしたら、どちらが良いかい?



すでに肉欲を覚えたけれど、僕の細胞を、魂を受け入れる事ができる雌の体と。

ただひたすら純粋無垢で、プラトニックな安楽期を手に入れることができる雄の体と。



本当に、君の意志を尊重してあげたいんだ。

僕は、どちらでも愛することができる自信があるから。



だから、選んでくれないか。

どちらの身体で、僕を愛するか。

選ばれなかった方はきっと……いつか死んでしまうと思うけれど。


そう、いつか……近い内に、ね。