Side実鳥

「暴行……ですか?」

誰が?
……私が?

「そうです」

誰に……?

暴行って、あれでしょ?
殴ったり蹴ったりすることでしょう?
ものをぶつけたり、刃物で傷つけることでしょう?
よく、ニュースで見るあれでしょう?

じゃあ私も葉も関係ない。
だって私は、葉にそんなこと……絶対にしない。
するはずない。
こんなに葉のことを、愛しているんだから。

「急に何ですか?それより手を離してください」
「できません」
「どうして!
「今手を離せば、あなたはまた葉くんに大きな傷を残すことになる」
「……はあ?」


何言ってるの。
この人は。

「大きな傷?私は葉が転ばないように必死に目を離さず……」
「そうですか、では」

山田さんはそう言うと、葉のシャツの裾をめくりあげた。

「やだぁ……かわいそうに……ほら、こちらにいらっしゃい」

歩美さん?
なんで?
どうして?
あなたは、子育て経験者でしょう?
子供を育てたことがあるなら、分かるでしょう?

子供が、大人になってから間違いを犯さないためには、ほんの少しの小さな痛みを与えて、知ってもらうことが必要だと。

「ママにいじめられて、かわいそうね」

かわいそう?
なんであなたが言うの?
あなたは知っているはずでしょう?
躾は、いじめなんかじゃないと。

「葉……こちらに来なさい」

早く、早く取り戻さなきゃ。

「やー!!!」
「葉!!!どうして言うことが聞けないの!!」
「やだー!!!ママ嫌いー!!!」
「葉!!!!」

ねえどうして?
何で?
ママは、こんなにあなたのことを想っているのに。
どうしてあなたにその気持ちは届いてくれないの?

「これで決まりですね」

決まり?
何が?

「歩美さん、このジュースを葉くんに飲ませなさい」
「かしこまりました」

やめて。
ジュースは、もう今日の分はだめ。
お茶……そうだ、麦茶がまだ鞄の中にあった。
飲ませるならあれにしないと……。

「葉くん、美味しい?」
「ジュース!!好き!」
「そう、これからはたくさん、飲ませてあげるよ」
「ほんと?」
「本当よ」
「うれしい……なぁ……」

ほら。
葉がまた、疲れ切って寝てしまった。
早く歯を磨かさなくては虫歯になってしまう。

「離してください。葉にうがいをさせないと」
「ご心配には及びません」
「え?」
「彼は今後、大切な身体として、しっかりとメンテナンスさせていただきますから」