Side実鳥

今、私は後悔をしている。
とても。

私がもし、あそこで葉を叩かなければ。
葉は歩美さんにあんなことを言わなかった。
だから私は葉を歩美さんに奪われた。

私がもし、海原と同じ場所に向かっていたら、歩美さんに会わずに済んだ。
歩美さんに会いさえしなければ、私は何の迷いもなく、海原と同じ意見でいられただろう。

私がもし、海原に悠木先生の正体を先に伝えていたら。
私がもし、海原についてこなければ。
ついてきたとしても、葉を実家に置いてさえいれば。

度重なるもしもが頭から離れない。


でも、1番の後悔は。
私は、海原と再会なんかしなければよかった。
海原に、頼らなければ良かった。


そうすれば。
こんなに虚しく苦しい思いなんて、味わわずに済んだのに。



親友を思い続けている元クラスメイトを、欲しくて仕方がないと思うことも。
親友だった人間の死を、心から望むことも。



そんな自分なんか、知りたくなかった。
見たくなかった。
見られたくなかった。


お願い。
誰も私の心を覗かないで。
見つけないで。
奪わないで。




もしもは決して戻らないなら。
たった1つしか選んではいけないのなら。
私はもう、私だけの大切なもののためだけに突き進む。



「凪波は諦めて」



私はもう、凪波は選ばない。
海原だけの幸せも、選ばない。