Side朝陽
徐々に、悠木先生の顔が近づいて来る。
悠木先生は、普通に微笑んでいた。
どうして、この状況でそんな顔ができるのか。
彼の顔が近づけば近づくほど、不気味さが増していく。
「海原君」
いつの間にか、俺と同じ目線にいた悠木先生は、藤岡に触れようとしていた。
俺は咄嗟に、藤岡の体を引き寄せた。
悠木先生の手が届かない距離まで。
「そんなに怖い顔をするな」
「え?」
言われて、気づいた。
眉間に皺が寄りすぎて、鼻の筋が痛くなっていた。
「大丈夫だ。鎮静剤だ。すぐ目が覚める」
「今度は、鎮静剤……ですか」
「理性的な話をしなくてはいけない時に、本能の赴くままでいられると困るからな」
「理性的……」
「そうだ。ここからは、大人と大人の話し合いだ」
それはきっと、凪波のこと。
「そうですね。俺も、理性で話をするべきだと、思います」
「そうか。ありがたいな。最初の予定では、君が一番障害になるはずだと思っていたからな」
何の、とは聞かない。
下手な情報はもう入れたくない。
「藤岡に何をしたんですか」
「ん?」
「一路にもしたように、藤岡にも何かしたから、藤岡がこんな状態になったんですよね」
「私がしたのは、この薬を体に入れただけだ」
「嘘だ」
「嘘ではない。私は、何もしていない。私はね」
その言い方は、わざと俺が引っかかるようにしているようだった。
「じゃあ、誰がしたというんだ」
俺は、その挑発に乗る。
それが、悠木先生の望みであることは、先生がふっと微笑んだのを見れば一目瞭然だった。
「私が、この世で最も愛する人、かな」
悠木先生はそういうと、急に立ち上がってこう言った。
「ついてきなさい」
「え?」
「君には、会わせた方が良いと思っていた。私の雪穂に、ね」
徐々に、悠木先生の顔が近づいて来る。
悠木先生は、普通に微笑んでいた。
どうして、この状況でそんな顔ができるのか。
彼の顔が近づけば近づくほど、不気味さが増していく。
「海原君」
いつの間にか、俺と同じ目線にいた悠木先生は、藤岡に触れようとしていた。
俺は咄嗟に、藤岡の体を引き寄せた。
悠木先生の手が届かない距離まで。
「そんなに怖い顔をするな」
「え?」
言われて、気づいた。
眉間に皺が寄りすぎて、鼻の筋が痛くなっていた。
「大丈夫だ。鎮静剤だ。すぐ目が覚める」
「今度は、鎮静剤……ですか」
「理性的な話をしなくてはいけない時に、本能の赴くままでいられると困るからな」
「理性的……」
「そうだ。ここからは、大人と大人の話し合いだ」
それはきっと、凪波のこと。
「そうですね。俺も、理性で話をするべきだと、思います」
「そうか。ありがたいな。最初の予定では、君が一番障害になるはずだと思っていたからな」
何の、とは聞かない。
下手な情報はもう入れたくない。
「藤岡に何をしたんですか」
「ん?」
「一路にもしたように、藤岡にも何かしたから、藤岡がこんな状態になったんですよね」
「私がしたのは、この薬を体に入れただけだ」
「嘘だ」
「嘘ではない。私は、何もしていない。私はね」
その言い方は、わざと俺が引っかかるようにしているようだった。
「じゃあ、誰がしたというんだ」
俺は、その挑発に乗る。
それが、悠木先生の望みであることは、先生がふっと微笑んだのを見れば一目瞭然だった。
「私が、この世で最も愛する人、かな」
悠木先生はそういうと、急に立ち上がってこう言った。
「ついてきなさい」
「え?」
「君には、会わせた方が良いと思っていた。私の雪穂に、ね」