memo凪波

おめでとうございます、と言われた。
これは、おめでたいことであるべきなんだと、私は思った。
どうしますか、と聞かれた。
私は、何も言えなかった。
決断は、早い方が良いと言われた。
私は、白い部屋から逃げた。
お腹をさすった。
何も反応がない。
だから、まだ実感はない。
私は、自分で選んでこの結果になったわけではない。
自分で選んだのは、たった1つだけだ。
それ以外は、いらなかった。
でも、選んだ1つに、私は選ばれなかった。
待合室で、誰かが話しているのを聞いた。
赤ちゃんは、親を選んで生まれてくるものだと。
選ばれて嬉しかったとも、その人は言っていた。
そうなのか。
私は、ようやく選ばれたのか。
選ばれたくなんかなかった。
こんなことで。
だって、もう決まっているではないか。
産まない。
殺す。
これが正解だ。
だって、望んだわけじゃない。
私は、されただけだ。
自分からしたいと思ってない。
どうして。
したいと思ったことからは逃げられて。
逃げたいと思うことには選ばれるのか。
これもそうだ。
あれもそうだ。
みんなそうだ。
すぐに手術をしなくては。
それは私に選ぶ権利がある。
そう思わなくてはいけないのに。
いっそ、あの人の子供じゃないとちゃんと分かっていたら、割り切って殺せたかもしれないのに。