memo凪波

その連絡がきたのは、本当に急だった。
あの人と、事務所しかもう知らなかったはずである私の電話番号に、誰かが非通知でかけてきた。
いつもならきっと電話を取らなかった。
けれど胸騒ぎがしたから、恐る恐る出てみた。
もしもしと、聞き覚えのある声が聞こえた。
忘れない。
忘れたくても忘れられなかった。
私が、つぶした才能の塊。
あの子だった。
どうしてこの電話番号を知っているのかと尋ねると、そんなことはどうでもいいだろうとスルーされた。
そしてあの子は言った。
やっと私がされたことの気持ちが分かったのか?と。
その言葉だけで、私は理解をした。
あの子は私のことを憎んでいたのだと。
それからあの子は、すぐに私に交換条件を持ちかけた。
騒動を終わらせるために、私が何を犠牲にすれば良いのかを。
私がすぐに頷くと、あの子は笑っていた。
それからすぐ、指定された場所に言った。
住所を言われてすぐに分かった。
私が、体を売り続けていた場所だったから。
その言葉の意味がわからないほど、私は世間知らずじゃない。
あの人が、長期の仕事に出ている時で本当に良かったと、思った。