Side朝陽

俺は、何度もこのノートを閉じたくなった。
文字の中から見えてくる凪波は、必死に一路への想いをかき消そうと必死なように見えた。
一路に凪波が執着していることが、ありありと分かった。
きっと俺は、凪波をもし取り戻したとしても、ここまで凪波に執着してもらえることはないかもしれない。
証拠はないけど、確信はある。
悲しいけれど、伊達に長く片思いはしていない。
凪波がどんな人間かは、わからないことが多かったとしても。
忘れていることが多かったとしても。
あいつが他人に向ける感情の強弱くらいは、簡単に気づいてしまう。

もう、凪波の心を覗くのをやめたかった。
手に感覚がなくなっていた。
それでも、横にいる藤岡は、目で訴える。
その先を読めと。
止まることは、許されない、と。

俺は、1度深呼吸をした。
心を落ち着かせるため。
少しでも、凪波の言葉を客観的に見られるように。

そしてそれが正解だったことはすぐに分かった。
もし、少しでも心が乱れた状態だったら、俺は叫んでしまっていたかもしれない。

凪波のこの先の運命は、それほどまでに残酷だったから。