memo凪波

明日は、あの人にとって大事なオーディションだ。
もっともっと、あの人には有名になってもらいたい。
スポットライトの下に立ってもらいたい。
何十年も繰り返し見られ続けるコンテンツに名前を残して欲しい。
全て、私の夢だった。
それを、私たちの夢にして、あの人の夢に作り替える。
それが、私の、彼のためにできる最後のこと。

今日は、あの人のためにたくさん料理を作ってあげよう。
あなたのために作った、という言葉を言えば、あの人は私のために動いてくれるから。
今はまだ、あの人のモチベーションとして、私が残ってしまっている。
このまま私が消えたら、あの人は歩くのを止めてしまう。
そんなのは許せない。
持っている人間が、そんなことで落ちるのは許してはいけない。

だから、もう少し。
あの人は最近、自分からもっと演技を勉強したいと言ってくれた。
厳しいことで有名な音響監督からも、指名が来るようになった。

もう少しだけ、許して欲しい。
あの人の側にいることを。
もう少しで、全部の準備が整うはずだから。

あの人が私に言う、愛しているの言葉は、ちゃんと聞かないようにするから。
知らないフリをするから。
忘れる努力を、いつかちゃんとするから。