memo凪波

ダメだ。どんなに頑張らせても結局行けるところは限られてる。
あの人へ伝えた事を、宮川さんにも教えたし、社長に言われてオーディションも率先して渡したと言うのに、ほとんど何の成果もない。
宮川さんは、社長にどう言われたのか知らないけれど、私の言う事を聞けば夢が叶えられると本気で信じているようだ。
私にも、そんな時代があった。
努力が正義だと信じていた。
苦しめば苦しむほどいつか絶対に報われると盲信していた。
でも今の私は知っている。
努力をしたものが勝つのではなく、選ばれた人間が努力をしてようやく夢は形になると。
私も宮川さんも夢に選ばれなかった。
宮川さんは私に、いつかあの人のように雑誌の表紙を飾りたいと言った。
夢を持つ人間は、目に星を飼っている。
その人だけの星。
だけど、本物のスターは、存在そのものが輝いている。
星など、飼う必要はない。
だからだろうか。
鏡の中の私から、もう星は去っていった。
あの人が、私の星を吸い取ったのだろう。
宮川さんも、いつか気づいてしまう。
この悲しい仕組みに。
持っているのが無駄な夢や望みを断ち切ってあげるのも、私がここにいる理由なのかもしれない。