memo凪波

社長は、一体どう言うつもりで私をあの人のマネージャーにつけたのだろう。
あの人と私の関係性を知っているはずなのに。
わざとなのだろうか。
社長には恩があるから、私は裏切れないと考えているからだろうか。
でも、社長のことを考えるなら、あの人とお別れをすることの方が正解だったのかもしれないけれど。
合理的に考えても、そっちの方がずっと良かったのに。
私にとっても、あの人にとっても、社長にとっても。
でも、もう遅い。どんなに後悔しても後戻りはできない。
私は、何度も腹をくくった。
これまでも。
だから後戻りは、できないんじゃない。
許されない。
許したくない。
そういえば、事務所で、マネージャーとしてあの人に私が紹介された時の表情は、魂が抜けたような表情をしていた。
あの時の表情の感覚は、覚えておいて損はない。
ライトノベルの主役を演じる時にあの雰囲気は使えるだろうから。
これからもっともっと厳しくあの人には演技を極めてもらおう。
そして、声優初のタイトルをあの人にたくさん取ってもらおう。
どうせ私なんかにはそんなことはできないのだから。
できる可能性がある人に、託そうとして何が悪い。
私は何も悪くない。