memo凪波

抱かれるとは、こういうことなのかもしれない。
愛されるとは、こういうことなのかもしれない。

私は、あの人と繋がって初めてそう思えた。
今まで私にとって、あの行為は動物の欲を満たすためのもので、仕方がなく行う義務のようなものだった。
あの人が触れたいというから、触れさせる。
最初は、いつもと同じになるだろうと思っていた。
期待も、喜びも何もない。
普通、避けたいけど避けられない日常のようなものと思っていた。

だけど、違った。
触れられた瞬間伝わる熱も、優しさも、私には知らなかったものばかり。
キスも、ただ欲を押し付けるためのものではなかった。
苦しくなかった。
気持ちよかった。
もっと欲しいと思った。
今までは、早く終わりにしたいとしか思えなかったのに。

あの人の触れ方が特別なのかもしれない。
私を商品として扱った他の男の人よりもずっと、うまかったから。
初めてイクということを実感したから。
思わず口にしてしまった。
この肉体的なつながりに、幸せだと感じてもいいのかと。
あの人は頷いた。
眩しいくらいの笑顔で。
ムカつくほど、その顔は綺麗だった。

だから、つい教えてしまった
自分の本当の名前を。
封印したかった自分を。
あの人は、そんなことを喜び、私は力一杯抱きしめてきた。
あれだけ、あんなに近づきたくないと思っていたはずの人なのに、あの人の温もりを知った今、離れてしまうのが怖いと考えている。
それが、女の肉体を私が持っているからだと思うと、そんな自分がとても嫌になる。
自分が女じゃなければよかった。
そうしたら、ずっとあの人を憎んでいられたのに。
ライバルを目指せたのに。
今私は、女としてあの人の体と温もりに屈服している。