memo凪波

絶望という言葉を、私は何度呟いたか。
その上で、何度も振り払おうとしたのか。

お金がなくて、ちゃんとした固形物を食べるのにすら困った時。
自分より実力がない人に、自分が負けた時。
お金で自分の処女を売った時。
それから、何度もいろんな男達に抱かれた時。
血を吐く想いをして演技力を身につけても、持って生まれた顔や声の前では、そんな努力はなかったことにされるのだと思い知らされた時。
一路朔夜が目の前に現れた時。

だけど、確かに自分を必要としてくれる存在も、少しずつできてきたから、絶望を考えるたび、私はその人達のことを考えて振り払おうとしてきた。
私にはまだ、ちゃんと存在価値があるのだと、実感したかった。

それなのに。
私の存在価値を、私が欲しくても手に入らなかった全てを持つ一路朔夜がやすやすと奪っていった。
私の目の前で。
私を頼ってくれる人たちの目の前で。

ああ。
これで私の存在価値は、ますますかき消された。
一路朔夜によって。

こんな絶望の乗り越え方を、私は知らない。