memo凪波

声の才能に、演技の才能に、歌の才能、顔の才能、話す才能。
この世界は、これらの中で2つ以上持つことができたら勝ち組になれるんじゃないかと思っていた。
でも、それが許されるのはきっと男だけ。
女の私は、顔の才能が足切りで、それをクリアできて初めて、次の勝負に挑む資格を得られるのだ。
どうして私は、男じゃなかったんだろう。
男として生まれていたら、こんなに苦しい思いをしなくて済んだんじゃないんだろうか。
好きでもない男たちに自分をしゃぶらせてここまできたのに。
女としての私は、結局華というものを持っていないから努力でカバーできるところはカバーするしかない。
私は主役にはなれない。
どう頑張っても。
だから、主役を引き立てることだけは、誰にも負けないようにしようと思った。
求められれば100人でも200人でも演じる。
今の私の体でできることは何だってする。
そうやって、私は自分の役割に納得する努力をようやくできるようになったと思ったのに。
一路朔夜が現れた。
あんな、私が欲しいものを全て持っているのに、それを全部生かそうともしない、嫌な男が。
思い出したくないのに思い出してしまう。
ああいう人が、主役になるべき人なんだと、悔しいくらいに思ってしまう。